全3848文字
PR

ビジネスパーソンはテレワーク環境下においても高いパフォーマンスを発揮して、成果を出すことが求められる。時間と場所を活用し、柔軟に働けるテレワークならではの良さをフル活用することが欠かせない。テレワーク先進企業やハイブリッドワークの推進企業では、雑談の大切さに注目。リアルやオンラインで雑談ができる場をつくって仕事を進めている。今回はその動向を紹介しよう。

 前回はイトーキのビジネスパーソンの働き方を通して、複数の場所を有効活用して働くコツを紹介した。オフィス内を自由に移動するワークスタイルを実現するABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)と呼ぶ方法論を、テレワークにも適用。在宅勤務や出社勤務、モバイルワークのそれぞれに適した仕事を見極めて、取り組んでいた。出社勤務やテレワークを組み合わせて働くハイブリッドワークで成果を得る働き方だと言える。

ハイブリッドワークの出社勤務で人気の働き方とは

 イトーキでは社員が取り組む仕事を10種類の活動に分類したうえで、それぞれの活動にふさわしい場をオフィス内に設けている。例えばパソコン作業を1人で進める執務用のスペースとしては、周囲から話しかけられることなく集中してパソコン作業ができる「高集中」と、他のメンバーと短い会話などをしながらパソコン作業などを進める「コワーク」の2種類を用意。打ち合わせや会議用のスペースとしては、2人でのコミュニケーション向け、3人以上でのコミュニケーション向けを設けている。

人気のスペースは「二人作業」と「コワーク」

 ハイブリッドワークに取り組むイトーキの社員に人気の出社勤務スペースが「二人作業」と呼ぶスペースだ。 社員2人が大型のディスプレーを見たりコミュニケーションを取ったりしながら並んで作業できる。2人でコミュニケーションを取るのに向く。

イトーキのオフィスに設置した二人作業のスペース
イトーキのオフィスに設置した二人作業のスペース
(出所:イトーキ)
[画像のクリックで拡大表示]

 イトーキ人事本部人事部人事企画室の一階裕美子室長は二人作業の場について「OJT(職場内訓練)やちょっとした打ち合わせに向く場として活用が進んでいる」と説明する。提案書をはじめとする文書ファイルの作成も二人作業の場で、先輩と後輩の社員同士が話し合いながら進めれば、「先輩が指示を出してから後輩が作成する」といった手順を踏むより仕事ははかどりそうだ。

 イトーキのオフィスでハイブリッドワークに取り組む社員に人気のスペースは他にもある。一階室長は「1人で作業をする場は高集中とコワークの2種類があるが、高集中の場は空いている一方、コワークの場は利用する社員が多い」と明かす。出社率が低く高集中の場が利用できる状況でも、コワークのスペースを活用する社員が多いという。

イトーキのオフィスに設置したコワークのスペース
イトーキのオフィスに設置したコワークのスペース
(出所:イトーキ)
[画像のクリックで拡大表示]

 高集中の場が空いているのはなぜか。一階室長によると、新型コロナウイルス禍で在宅勤務が普及していることもあり、高集中の作業は、作業中に他の社員から話しかけられるといったことがない自宅で取り組めるようになったからだという。つまり社員は在宅勤務の場である自宅を高集中の場としているわけだ。

 その一方で「オフィスに来たときには、他の社員と話をしながら1人での作業に取り組めるコワークのスペースに人気が集まっている」と一階室長は説明する。在宅勤務ではビジネスパーソンが1人で仕事に取り組むことが多いので孤独感を抱きがち。一方、イトーキが設置したコワークのスペースでは、他の社員の存在を感じたり、雑談を挟んだりしながら1人作業に取り組めるため、孤独感は和らぎそうだ。