デジタルで総合商社のビジネスモデルの変革へ――。三井物産がデジタルを生かした事業変革に挑んでいる。資源、金融、医療といった幅広い分野で事業を展開する三井物産。DX事業戦略では注力すべき6つの攻め筋を策定した。AI(人工知能)やブロックチェーンなどの先進技術に加えてデータを徹底的に活用、新規事業の創出や既存の事業の強化に取り組む。「人の三井」から「人とデータの三井」へ。デジタル戦略の全貌に迫る。
「デジタルの力なしに変革はありえない」。三井物産の米谷佳夫副社長執行役員、CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)は、変革におけるデジタルの重要性を指摘する。
三井物産が目指すのはデジタルを活用した「オペレーショナルテクノロジーの改善」だ。ここで言うオペレーショナルテクノロジーとは、商品知識からビジネスの知見、営業力、物流機能、法務、人事まで、文字通り、総合商社としての事業運営ノウハウの全てを指す。
事業構造の変革へ、三井物産はDXの基本方針を定めた。まず取り組むのが既存事業の効率化。主に既存事業を対象に、手作業の自動化や高速処理、ペーパーレス、手順の簡素化などでコストを削減する。
効率化を土台に取り組むのが、既存事業の収益力向上だ。AI(人工知能)やデータプラットフォームといった技術を使い、船舶運航や病院経営の最適化だ。短期的な効率化と収益力向上の先には、ブロックチェーン技術を用いたデジタル証券やICT技術を用いたスマートシティーなど中長期的な新規事業の創出を目指す。