全2045文字
PR

 三井物産が目指すのは徹底的なデータの利活用だ。「データは見るものではなく使うもの」というビジョンに基づき基幹システムを刷新。各システムに入力するデータを一元管理するシステムDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)も構築した。

 集約したデータを分析するためのチームも組成。データを循環させる体制を整えることで、データ活用を成果につなげてさらなるデータ活用を促す「スパイラルアップ」を目指し、事業変革を目指す。

 「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める大きな武器だ」。三井物産の米谷佳夫副社長執行役員、CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)は、国内外の基幹システムを「SAP S/4HANA」へ移行させた大規模プロジェクトの意義をこう強調する。

基幹システム「MIRAI」をSAP S/4HANAへ移行
基幹システム「MIRAI」をSAP S/4HANAへ移行
(SAPの資料を基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]

10年ぶりに基幹システムを全面刷新

 三井物産は2019年11月に海外拠点向けの基幹システム「MUGEN」、2020年9月には国内向けの基幹システム「MIRAI」を、それぞれSAP ERP(ECC 6.0)からSAP S/4HANAへ移行し、稼働させた。2010年に稼働開始したMIRAIに関しては10年ぶりの全面刷新だ。

 刷新したMIRAIの特徴は、国内拠点と国内のグループ会社で分けて運用していたインスタンスを1つに統合した点だ。オンプレミスで運用していた旧システムを、米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドサービス「Microsoft Azure」へ移行し、拡張性を高めた。SAPがAzure版の機能拡充を今後も進める方針を打ち出している点も考慮した。

 三井物産は2017年に同プロジェクトの検討を開始し、2018年には構想策定に着手した。当初は抜本的な再構築を検討していたが、費用がかさむうえ期間の見積もりも約2年と長期にわたると判断。結果として、アドオンを含め既存環境で稼働しているシステムをそのままSAP S/4HANAへ移行させる「ストレートコンバージョン」を採用した。

 プロジェクトでは既存システムの改善要望の取り込みとツールを活用したアプリケーション資産のコンバージョンの2つが課題に浮上した。プロジェクトチームを各課題に応じて2つに分けて開発を進め、進行状況を共有することで工期の短縮に努めた。「MIRAI」の移行プロジェクトに関わった人数は延べ約340人。同社の子会社である三井情報が開発を主導した。