「人とデータの三井」へ脱皮するための鍵を握るのがデジタルトランスフォーメーション(DX)活動だ。三井物産の潜在力を引き出すため、どのようなデジタル戦略を立案・実行しているのか。CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)を務める米谷副社長執行役員に聞いた。
(聞き手は玉置 亮太=日経クロステック/日経コンピュータ、翁 羽翔=日経クロステック/日経コンピュータ)
CDIOとしてのミッションをどのようにとらえていますか。
CDO(最高デジタル責任者)とCIO(最高情報責任者)の役割を統合して、攻めと守りのDXを一体で推進することです。一般にDとIはデジタルとインフォメーションを表しますが、私自身のメッセージとして強調するためにDとIに3つの意味を込めています。
1つめはDX&イノベーション。イノベーティブな発想を基に出発して変革を進めていきます。第2はデータ&インフォメーション。全てのDXの起点はデータであるという意識を、より高めたいと考えています。
3つめはダイバーシティー&インクルージョン、すなわち人材の多様性です。DXを進めるに当たっては多様な人材がとても大事だと実感しており、従来当社にあまりいなかったタイプの人材を集めて、自由闊達に議論を重ねて新しいビジネスをつくる、そんな風通しの良い組織をつくりたいと考えています。
三井物産に今までいなかったタイプの人材とは具体的に。
例えば高度な技術スキルや専門知識を持つ人材ですね。大学院や博士課程でAI(人工知能)や量子コンピューターなどの分野を重点的に学んできた方たちです。
こうした人材について、新卒かキャリアかを問わず採用を増やしています。2021年から「DXインターン」という制度を導入しました。社員と2週間一緒になって新しいビジネスを考えてもらうプログラムです。
最先端のデジタル人材は総合商社同士だけでなく「GAFA」とも取り合いになるのでは。人材獲得競争に勝ち抜くうえで、三井物産のブランドは通用しますか。
すでにGAFAと取り合いになっています。優秀な方たちが当社への魅力を感じていただけるのは、幅広い領域でリアルなビジネスを手掛けているからだと自負しています。
高い技術や能力を備えた人材は、自らの技術をどう実装し応用できるか、よいビジネスを生み出せるかに関心があるのではないでしょうか。三井物産に入社したら現場で自分の能力を最大限に発揮できるのではないか、こう思ってもらえている人が多いと感じています。
「DX&イノベーション」に関して今後注力していきたい分野は。