ロボットの活用が社会に広がり、新たなビジネスチャンスが生まれている。いまロボットは世界をどのように変えているのか。パナソニックホールディングスでロボティクス推進室室⻑を務める安藤健氏がロボット産業の現在を描き出す。
パナソニックホールディングス ロボティクス推進室 室⻑
ロボットの活用が社会に広がり、新たなビジネスチャンスが生まれている。いまロボットは世界をどのように変えているのか。パナソニックホールディングスでロボティクス推進室室⻑を務める安藤健氏がロボット産業の現在を描き出す。
前回では、AI適用でロボットの利用シーンが広がっていることを紹介した。しかし、現時点でのAIの能力を考えると、あらゆるロボットの利用シーンで、取りあえずAIに任せておけば大丈夫という状況にはなっていない。
ここまで国主導で進んでいるロボットの動作環境を整える取り組みを紹介し、その性能を発揮する環境づくりの重要性を示した。とはいえ、ロボットが高性能であるに越したことはない。そこで、ここからはロボットの性能を引き上げるAI(人工知能)の利用を考えたい。
前回は、テープを張る、レールを使うといった比較的シンプルでアナログな手法を用いて、ロボットの動作環境を整える手法を紹介した。今回はもう少し環境整備にテクノロジーを利用し、ロボットのタスク処理を支援する手法に注目したい。この手法について、ロボット工学分野では「環境構造化」「空間知能化」という呼ぶこと…
ここまでの連載で、いつの間にかロボット開発が目的化してしまう「ロボットの魔力」の恐ろしさ、そしてそれを脱する必要性についてご理解いただけたものと思う。ここからは、ユーザーとの共創という文脈の中で、主にPoC(概念実証)の技術検証フェーズでロボットの性能を最大限に引き出す環境づくりを考えてみたい。
前回、実証評価、すなわちPoC(ポック、Proof of Concept、概念実証)を実施することが目的になってしまい、いつまでも実用に結びつかないことが多いという話をした。では、どうすればこの「PoC死」を避け、真に強いソリューションにつなげられるのか。PoC死を避けるため、PoCを4つのフェー…
本連載をここまで読んでくださった方から、「分析しているだけではロボットは作れない」とお叱りを受けそうである。確かに、分析だけでは、解くべき課題まではたどり着けても、解くことは難しい。そして、よほど定型化した課題でなければ一発で解くことは難しい。
「お客様はロボットが欲しいわけではなく、お困りごとを解決してくれればいい」。その当たり前をどのように実現していくのか。手段を目的化させるロボットの持つ魔力を取り払うためには、「お客様(を含む複数のステークホルダー)のお困りごとに目を向ける現場分析」や「現状の技術の実力を見極めた上で完全自動化を目指…
いま一度、人の作業を代替するロボット開発の問題点を考えたい。実は、このアプローチの問題点の1つとして、人の作業を基準としたロボットをいかにコンパクトにするか、そしていかに安くするかという改善サイクルに入って、いつの間にかその先に解がない袋小路にはまる状況になってしまいがちである。
ここまで「RX(Robotics Transformation)」を実現することこそ、目指すべき姿として提示した。では、RXを実現するために最も大事なことは何であろうか?1つは、解くべき課題に対して、「圧倒的当事者意識」を持っていること。そして、もう1つが「ロボットにこだわり過ぎないこと」である。
産業用ロボットからサービスロボットに市場が拡大するにつれて、新しいビジネスモデル、新しいプレーヤーも出てくることが見込まれる。
ロボットビジネスの変革はなにもユーザー側だけで起こるものではない。ロボットを製造するメーカー、導入にかかわるシステムインテグレーター(SIer)も大きな影響を受ける。
「相模屋食料」という会社をご存じだろうか。正解は豆腐屋さんだ。ロボットの連載で、なぜ豆腐屋さん?と思われるかもしれないが、実は同社はロボットの導入でビジネスの在り方が大きく変化した企業なのだ。その成果は年商にも現れている。
第1回、第2回の事例や数字を見ると、右肩上がりで市場が拡大し、前途洋々という感じにもみえる。しかし、現実問題としてはそれほど簡単なことでない。一過性のブームで終わらせず、しっかりと成長路線に乗せるために必要な考え方が、「RX:Robot Transformation」だ。
2019年から広がった新型コロナウイルス感染症が、(1)自動化技術による生産性向上、(2)遠隔操縦技術による安全性向上・知能性向上、(3)自己拡張技術による幸福度向上、という3つの提供価値に大きな影響を与えた。それはロボットの価値自体が変化したというより、ロボットが有する価値を求める声が増え、社会…
ロボット掃除機の「ルンバ」などをお持ちの方は日々、その姿を見ているだろうし、家族で外食をしてファミリーレストランや焼肉屋さんで配膳や下膳を行うロボットに出くわしているかもしれない。もしくは製造の現場、物流の現場で、実際にロボットを使った業務に日々携わっている人もいるだろう。