皆さんは、身の回りで「ロボット」を見る機会はあるだろうか?
ロボット掃除機の「ルンバ」などをお持ちの方は日々、その姿を見ているだろうし、家族で外食をしてファミリーレストランや焼肉屋さんで配膳や下膳を行うロボットに出くわしているかもしれない。もしくは製造の現場、物流の現場で、実際にロボットを使った業務に日々携わっている人もいるだろう。
数年前までは、「ロボット」というと、客寄せパンダ的な位置付け、定期的にブームになるような存在だった。しかし、近年、ロボットの活用が多くの場所で、急速に進みつつあり、数十億から数百億円規模の投資や数千台規模のロボットの実導入というニュースを頻繁に見かけるようになった。今、まさにロボットビジネスが大きく育ち始めているタイミングともいえる。
私自身、現在パナソニックホールディングスの中で、ロボットの研究開発や事業開発の責任者として、日々、ロボットへのニーズの高まりを感じている。ロボットは、現在のパソコンやスマートフォンと同じように、今後ビジネスを進める上で必要不可欠な要素になっていくだろう。
そこで、皆さんにロボットについて知ってもらい、ビジネスの一助としてもらうために、筆を執ることとした。自分自身の失敗も交えながら、数回にわたり、ロボットをビジネス化する上で、何が肝になるのか、何に気を付けなければいけないのかなど、ロボット研究開発、事業開発する上でのポイントについて紹介していきたい。
初回に当たる今回は、まずロボットとはどのような存在なのか、これからどのようなビジネスが育っていくのか、そして、なぜ今、ロボットが注目されるのか? について述べる。
そもそも「ロボット」という言葉は、作家カレル・チャペックが1920年に書いた戯曲『ロッサム・ユニバーサル・ロボット会社(R.U.R.)』に登場する人造人間に名付けられた、チェコ語で労働を意味する「robota」に語源があるといわれている。つまり、労働のためのツールとしてロボットは誕生したのである。
その後、多くの研究者などがロボットとは何なのかということについて議論を繰り返しているが、私が今一番しっくりきている定義は、経済産業省が2006年に発行した『ロボット政策研究会報告書』のもので以下の通りだ。
「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」
つまり、人間でいう目などのセンシングの機能、脳や神経に当たるインテリジェンスを生み出す機能、筋肉や骨に当たるアクチュエーションを実行する機能の3つがあれば、ロボットと呼んでよいというものだ。実にシンプルかつ広義な定義であり、例えば自動運転を行う車もロボットとなる。