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 第1回、第2回の事例や数字を見ると、右肩上がりでロボット市場が拡大し、前途洋々という感じにもみえる。しかし、現実問題としてはそれほど簡単なことでない。一過性のブームで終わらせず、しっかりと成長路線に乗せるために必要な考え方が、「RX:Robot Transformation」だ。今回はRXに関する考え方を紹介したい。

現実世界を変える「RX」

 「RX」という言葉になじみのある方はほとんどいないであろう。既にブームとなっている「DX:Digital Transformation」や「CX:Corporate Transformation」の類いのものであり、「Transform」という言葉が示すようにロボットによりそれまでの状態を完全に壊し、再構築することで、根本的に在り方を変えてしまうことである。「RX」という言葉が最近一番メディアにも出たのは、鹿島、竹中工務店、清水建設というゼネコン大手が作った「建設RXコンソーシアム」という組織体であろう。

 RXの必要性を考える前に、まずDXについてより深くみてみたい。経済産業省DXレポートや各種資料などでも指摘されることが多いが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の手前に、アナログをデジタルにする「デジタイゼーション(Digitization)」、個別の業務をデジタル化する「デジタライゼーション(Digitalization)」というものが存在する。

 例えば、紙での受発注業務を、電子印鑑を使ったデータをメールでのやり取りに切り替えるのが「デジタイゼーション」、受発注のシステムを導入して管理するのが「デジタライゼーション」、受発注の履歴なども考慮して在庫切れ前に商品の補充を自動化してしまうのが「DX」である。多くの企業がデジタイゼーションやデジタライゼーション止まりになりがちで、本質的な課題の解決につながっていないのに満足しているというケースが多い。本当のDXまで踏み込むと、業務の改革に伴い、既存の業務従事者や既得権益との戦いが発生し、「痛み」が生じることが多いというのも、推進が加速しにくい要因となる。

 この3つの分類はRXにも展開できる。何かのタスク、業務をロボット化することを“Robotize”とし、作業の一部をロボットに移行する「ロボタイゼーション(Robotization)」、ある工程の業務をロボットに移行する「ロボタライゼーション(Robotalization)」、1つの工程にとどまらず事業やビジネスモデルをロボットで変革する「ロボットトランスフォーメーション(Robot Transformation)」となる。

ロボットトランスフォーメーション(Robot Transformation)
ロボットトランスフォーメーション(Robot Transformation)
ロボットの導入は、作業をロボットに移行する「ロボタイゼーション(Robotization)」、作業の連なり(工程・業務)をロボットに移行する「ロボタライゼーション(Robotalization)」、企業・事業を変革する「ロボットトランスフォーメーション(Robot Transformation)」の状態に分類できる。必ずしもRobotizationやRobotalization、Robot Transformationという順番で重要性が上がるというわけではない。(安藤氏の図版を基に日経クロステックが作図)
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 「ロボタイゼーション」と「ロボタライゼーション」の違いは曖昧だ。ただ分かりやすく述べると、前者は作業の一部のみの自動化、後者はその作業が連なった工程全体の自動化、システムとの連係を含むと考えてもよさそうである。

 このように定義をすると、これまでの産業ロボットは、(少し誇張的な表現になるが)基本的には「ロボタイゼーション」という領域で戦ってきたのではないだろうか。もしくは、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)との連係やIoTとしての活用の中で「ロボタライゼーション」を実行し、よりインパクトを大きくしてきた。