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 ロボットビジネスの変革はなにもユーザー側だけで起こるものではない。ロボットを製造するメーカー、導入に関わるシステムインテグレーター(SIer)も大きな影響を受ける。

 これまでの製造業におけるロボット活用を振り返ってみると、多くの場合、メーカーがロボット本体を製造し、ユーザーに届ける前に、SIerと呼ばれるプレーヤーに渡していた。ロボットは目の前にあるだけでは思い通りには動かず、ただの高価な金属の塊である。

 この金属の塊に、命を吹き込むのがSIerだ。SIerは何をしているのかというと、ロボット本体と画像認識のためのカメラなどの周辺のセンサーとをつなぎ、製造ラインの中に組み込むなど、文字通りロボットを含むさまざまな部品やシステムをインテグレートし、ユーザーが望むような動きを実現している。

 詳細は別の機会に譲ることにするが、実際にはこのシステムインテグレーションという行為は手間もコストもかかる。ユーザー側からしてもロボット本体の価格と同程度、場合によってはインテグレーションコストのほうが高くなるという話はよく聞く。

 ただ、これまでの自動車産業や電機電子産業におけるロボット活用は、SIerの存在が比較的うまく機能してきた。SIerがユーザーごと、もしくは製造拠点ごとに、ロボットについても、ユーザーの業界や会社や製造ラインなどについても熟知し、メーカーとユーザーの双方の思いをくみ取って現場を支えてきたからだ。今後もロボットの活躍の場が広がれば、SIerは導入業界ごとにその機能を求められるであろう。

 一方で、システムインテグレーションそのものにかかる負荷やコストを低減していく取り組みも加速度的に増えている。その取り組みの代表格は、日本のスタートアップであるMujin(東京・江東)だ。

 ロボットを動かすためには、ロボットが動く位置などを事細かく教え込む「ティーチング」という行為が必要だ。しかもメーカーごとにロボットの制御方法が異なるため、インテグレーションが大変であった。この課題に対して、Mujinは複数のメーカーにわたってロボットをより知能的に制御できる制御コントローラーを開発した。これにより、大手メーカーのロボットをより簡単に動かせるようになり、中国の大手eコマース企業である京東商城やユニクロなどの物流拠点の自動化に大きく貢献している。

Mujinのコントローラーを利用し、ティーチングなしにピッキング作業などを自動化する。
Mujinのコントローラーを利用し、ティーチングなしにピッキング作業などを自動化する。
(写真:日経クロステック)
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 産業用ロボットメーカーも、SIerコストを低減するための研究開発を進めている。2022年3月に開催された「2022国際ロボット展」では、大手メーカーはどこもティーチングの負荷を少なくする、もしくはティーチングレスにするための技術を発表していた。例えば、三菱電機は、口頭での指示でロボットを動かすことができる技術や、音声認識に加えて、空間認識技術やAR技術などを組み合わせることで、直感的にオペレーターがロボットを操れるようになるデモを実施していた。

 このような技術は、これまでのような熟練したSIerが少ない業界や多品種少量生産など作業の変化が頻繁に起きる業界で重宝されるようになるはずだ。ロボットメーカーも、既存製品より精度が高い、より高速に動かすといった方向性だけでなく、新しい市場でのロボット導入に向けた機能の開発にも注力している。

 技術以外の側面にも目を向けてみよう。サービスロボットの分野では、新しいプレーヤーたちが既存の産業用ロボットのビジネスモデルに固執することなく、新しいロボットビジネスを実現し始めている。代表的な考え方としては、ロボット以外の分野でも主流になりつつあるXaaS(X as a Service)型ビジネスである。

 ロボットの場合には「Robot as a Service(RaaS)」と呼ばれ、ロボットの作業量に応じて課金するビジネスモデルがある。これはロボットが自動車産業や電機電子産業以外の業界に普及し始めたことと深く関係しているだろう。

 例えば、農業分野においては、アスパラガスの収穫ロボットで有名な「inaho(イナホ、神奈川県鎌倉市)」、ピーマンの収穫ロボットで有名な「AGRIST(アグリスト、宮崎県新富町)」などが、初期費用を抑える一方で収穫量に応じた課金を行うビジネスモデルを採用した。

 このRaaSにより、ロボットメーカーの収益の上げ方も変化し始めている。具体的には、単にロボット製品を売ってもうけるというだけでなく、顧客との継続的な関係性を利用して複数の収益源を得ようというものだ。