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 ここまで「RX(Robotics Transformation)」を実現することこそ、目指すべき姿として提示した。では、RXを実現するために最も大事なことは何であろうか?

 1つは、解くべき課題に対して、「圧倒的当事者意識」を持っていること。そして、もう1つが「ロボットにこだわり過ぎないこと」である。

 「圧倒的当事者意識」は、ロボットに限らず何か新しいことに挑戦する際、必要な心構えかもしれない。一方で、ロボットにこだわり過ぎないということはRXならではだ。

 ここでは、まず「ロボットにこだわり過ぎない」について考えてみたい。RXを進めるのに、「ロボットにこだわるな」というのは、逆説的であるように感じるかもしれない。

 なぜあえて「こだわり過ぎるな」と注意しなければならないのか。それは、ロボットに「魔力」があるからである。しかも、かなり強い魔力だ。気付かぬうちに、ロボットで事業を変革するはずが、ロボットを開発すること自体が目的になってしまうのだ。

 ユーザーからすれば、ロボットが欲しいわけではない。何か困りごとがあり、それを解決したいわけだ。解決できるのであれば、必ずしもロボットである必要はない。当たり前だが、ロボットよりも、安く、簡単に、効果的に課題が解決できる手段があれば、ロボットは不要だ。

 この当たり前は、ロボットの魔力により、いとも簡単に忘れ去られてしまう。ある意味では、ロボットの「魅力」とも呼べる。しかし、魅力的であるが故に、その魅力は時に魔力となってしまう。

 特に日本人にとって、ロボットは身近な存在だ。日本人は、アニメキャラクターとして鉄腕アトムや鉄人28号に始まり、ガンダムやドラえもんといった様々なロボットに日常的に接してきた。そのため、我々は、なぜか「ロボット」というものに対して、ポジティブな期待を抱く。米国のハリウッド映画で、ロボットの多くが、ターミネーターのように人類を滅亡させようとするのとは正反対である。

 高専生や大学生のロボットコンテスト(通称、ロボコン)は、NHKで全国大会が日本中に放送される。学生の全国大会がテレビで放送されるのは、野球、サッカーなど人気スポーツくらいで、それと並ぶロボットがいかに人を引きつける存在であるかが分かる。

 RXを実現する上で、ロボットの魔力にだまされることなく、冷静になり、「本当に顧客の困りごとの解決につながっているのか?」を改めて考える必要がある。そして、「ロボット以外の方法で解決したほうがよいのではないか?」「その動作は自動化する必要があるのか?」などと考えなければならない。

 特に開発側には、この魔力が想像以上に強く働くため、冷静な判断が必要だ。実際のロボット導入案件について考えてみると、ロボットが必要な理由にたどり着くケースはかなり少ない。他のITシステムの導入や、専用治具の利用、レイアウトの改善、業務のオペレーション改善などで、大部分が改善される。

 ここでパナソニックホールディングスの事例を通じて、この魔力の作用と、それへの対処を述べたい。取り上げるのは、福祉ロボット「リショーネ」である。リショーネは、電動ベッドの一部が車椅子に変形するロボットだ。被介護者のベッドから車椅子への移乗(トランスファー)作業をなくすことで、介護者の腰への負担などを軽減することを目的に開発した。2014年に市場投入され、16年には「リショーネPlus」という製品名で、多くの介護施設で使用いただいている。

離床アシストロボット「リショーネPlus」
離床アシストロボット「リショーネPlus」
(写真:パナソニックホールディングス)
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