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 いま一度、人の作業を代替するロボット開発の問題点を考えたい。実は、このアプローチの問題点の1つとして、人の作業を基準としたロボットをいかにコンパクトにするか、そしていかに安くするかという改善サイクルに入って、いつの間にかその先に解がない袋小路にはまる状況になってしまいがちである。

 人の作業をそのまま代替するロボット開発から逃れるためには、人の作業・動作を模擬するのではなく、現場全体の観察や分析が非常に重要になる。問題の本質は何なのかをまず考えることが大切なのだ。例えば、前回に紹介した「リショーネ」のケースであれば、腰痛発生の最も大きな原因を探るため、1日の被介護者の行動を分析した。

 要介護度のレベル、施設の種類によっても1日の過ごし方は大きく異なる。ただ代表的な一例を示すと、以下の通りであった。おおよそであるが、1日で10~12回ほどの移乗作業が発生する。

介護施設における行動分析
介護施設における行動分析
(出所:パナソニックホールディングス)
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 確かに移乗という作業は多く、1人当たり1週間で70回、80回という介護者も存在していた。この分析で分かったのは、実は移乗作業は、約95%がベッドと車椅子の間だったということである。ちなみに、それ以外は入浴の際の浴槽への移乗などである。

 それであれば、重点的にベッドと車椅子間の移乗作業時の負荷を低減できればいいのではないかという発想に至り、ベッドの一部が車椅子に変形するリショーネのコアコンセプトにたどり着いた。

 しかし、このコンセプトにたどり着いてもなお、ロボットの魔力は襲ってくる。2009年、ベッドの一部が車椅子に変形し、分離するというコンセプトで最初に作られたのが、写真のような「ロボティックベッド」というコンセプトモデルだ。キャノピーが付き、バイタルセンシング機能や通話機能などが付いた盛りに盛ったモデルは、商品化を目指したものではなく、コンセプトを世界に提示し、ブランディングする意味合いが強かった。

* https://news.panasonic.com/jp/press/data/jn090918-1/jn090918-1.html

コンセプトモデル「ロボティックベッド」
コンセプトモデル「ロボティックベッド」
(写真:パナソニックホールディングス)
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 ロボットの魔力として注目すべきは、その次の商品化を目指したモデル「ロボティックベッド(2011年国際福祉機器展モデル)」だ。機能としてかなりシンプルになり、コンセプトであるベッドの一部が車椅子になる製品になった。見た目も、現在のリショーネにかなり近い。では、何が違うのだろうか?

商品化を目指したモデル「ロボティックベッド(2011年国際福祉機器展モデル)」
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商品化を目指したモデル「ロボティックベッド(2011年国際福祉機器展モデル)」
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商品化を目指したモデル「ロボティックベッド(2011年国際福祉機器展モデル)」
左からベッドモード、車椅子モードである。(写真:パナソニックホールディングス)