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 「お客様はロボットが欲しいわけではなく、お困りごとを解決してくれればいい」

 その当たり前をどのように実現していくのか。手段を目的化させるロボットの持つ魔力を取り払うためには、「お客様(を含む複数のステークホルダー)のお困りごとに目を向ける現場分析」や「現状の技術の実力を見極めた上で完全自動化を目指さずに人とロボットで役割分担」をすることが非常に重要になってくる。

 特に、現場分析については、サービス領域など新しいロボット活用領域であったとしても、以前から製造業が持っているコアコンピタンス(中心的な競争力の源泉)を発揮できる。

 本連載の前回(第8回)で紹介した「リショーネ」の例では、非常にシンプルにした形で分析結果を紹介した。しかし、実際にはもっと複雑な分析を実施している。例えば、病院の薬剤業務を分析したとしよう。この場合、首からストップウオッチをぶら下げ、手にはデジタルカメラを持った状態で、観察対象となる薬剤師の業務を徹底的に調査することになる。

 現在では、人工知能(AI)技術が発達しており、動線分析や視線分析なども自動で実行できるようになっている。そのAIと、経験に裏打ちされた人間による分析の切り口、改善の仕方などのノウハウをうまくハイブリッドさせていくことが有効だ。

 ここで生きるのは、製造現場での効率化や改善の経験である。つまり、製造現場で作業時間をどうやって1秒でも縮めるか、どう安定的に生産できるのか、どうやってミスの発生を抑えられるのかなどを真剣に考えてきた経験である。その中に、現場は違っても、応用できる考え方が大量に存在している。

 2009年頃にパナソニック(現パナソニックホールディングス)が松下記念病院と共に行った、病院業務の分析結果を見てみると、「業務工数分析」「在庫削減シミュレーション」などと製造業でもなじみのあるキーワードが並ぶ。自分たちが持っている強みは、気づきにくいものである。我々のようなメーカーが持つ、現場分析・改善力というものも、その1つだろう。幸いにもユーザー視点で書いていただいた記事もあるため、興味があれば目を通していただきたい。

* https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kurachu/202107/571278.html

業務分析結果の一例
業務分析結果の一例
(出所:パナソニックホールディングス)
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