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 前回、実証評価、すなわちPoC(ポック、Proof of Concept、概念実証)を実施することが目的になってしまい、いつまでも実用に結びつかないことが多いという話をした。では、どうすればこの「PoC死」を避け、真に強いソリューションにつなげられるのか。PoC死を避けるため、PoCを4つのフェーズに分けて考えてみる。
4つのフェーズとは以下の通りである。


  • 第1フェーズ(PoC1):何に使うかをしっかり考える(企画検証)

  • 第2フェーズ(PoC2):技術的に対応できるか考える(技術検証)

  • 第3フェーズ(PoC3):オペレーションに組み込んで効果を検証する(効果検証)

  • 第4フェーズ(PoC4):PoC死を避ける(導入検証)

PoCのフェーズ
PoCのフェーズ
(出所:パナソニックホールデ ィングス)
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 どのフェーズにいるのか、フェーズの違いをメーカ―側、ユーザー側がともに意識してPoCを設計・推進するのが大事である。第4フェーズのPoC、すなわち、PoC4がPoC死にならないようにする対策は何も特別なことではなく、当たり前のことばかりだ。この当たり前にはまってしまうのが「ロボットの魔力」なのだ。この点も自戒の意味も込めて整理したい。

第1フェーズ:何に使うかをしっかり考える(企画検証)

 第1フェーズは、ロボットが動いている様子をできるだけ多くのステークホルダーに見てもらう段階だ。狙いは、「ロボットというものはこんな感じか」とイメージをつかんでもらうことにある。

 ロボットブームや導入ケースの増加により、以前よりロボットの実力がどの程度か理解されるようになった。ただし、その理解は、あくまでロボットに積極的に興味を持っている人だけだ。ある施設で「ロボットを使いたい」と思っている人がいたとしても、その施設の関係者の約9割は、ロボットの運用・利用に興味がないし、見たこともないと考えるべきだ。

 さすがにドラえもんのような万能なロボットやヒューマノイド型のロボットがシャキシャキと動き、何でも自動でできてしまうレベルを想定する人は少なくなっている。しかし、それでも現状の実力値からすると、かなり高レベルで、環境が変わったとしても安定して動作し、人と同じような作業ができるというイメージを持っている人が多い。

 ロボットリテラシーが極めて高い利用者も確実に増えている。だが研究者や開発者の想像以上に、一般の人は、ロボットが何でもできるわけではないことを知らない。ロボットの導入に向けては失望感を与えぬため、このことを強く伝えるべきだろう。

 その一環として、ユーザー候補企業にロボットを持ち込み、業務の空き時間などにロボットを知らない人を含めた大多数に、ロボットを見てもらったり触れてもらったりするといい。その上で「このロボットは、どのように使えるか」を考えてもらう。もしプロダクトがあれば、展示会などに見込みユーザーを誘って、実際の動きを見てもらうことも有効だろう。

 第1フェーズでは、完成度の高いロボット本体はなくてもよい。ただ実機があれば、確実にディスカッションが盛り上がる。しっかりとした完成形でなくも、スケッチやモックアップなどでも十分話題を提供してくれるはずだ。

 ロボットに求められる機能・仕様などを確認するならば、構想している企画を形あるダミーで代替してもよい。例えば、段ボールである程度の形を再現したり、簡易的な可動部を作ったりすることで、ロボットの動作イメージを共有できる。この場合は、段ボールと粘着テープで作ったような手作り感満載のダーティープロトでも問題ない。

 ロボットが提供する体験価値を確認するため、人間がロボットの代わりになるのもいいだろう。人間が代替を務める場合、シチュエーションのリアルさが重要である。

 例えば、移動型ロボットによる配送サービスの検証を考えてみる。最初の段階で高性能なロボットは不要だろう。ロボットの開発完了を待つのではなく、実際に運用を想定するビル内や街中で、人が台車を押して、荷物を移動させれば、ユーザー側の体験価値の検証は十分にできる。開発側としてもオペレーション視点で求められる機能を洗い出せる。

 また検証の際に大事な点として、開発側はユーザーがどれだけリソースを掛けているのかを見積もることが挙げられる。検証の優先順位やリソースを見極めて、ヒアリング、実地での観察などを実施していく。

 もし、このフェーズで、ユーザー側でロボットの導入意義が定まっていない、もしくは、リソースを見積もれないならば要注意である。課題が十分に整理しきれていない場合がある。「どんな使い方ができるか分からないので、とにかく現場を自由に使ってみていいよ」、もしくは「ロボットを使ってみたいと思っているんだよね」という話を持ちかけられるケースもよくある。もちろん、その言葉にも一理ある。だが、手間をかけて実証もしくは導入したロボットが客寄せパンダに終わってしまわないためにも、ユーザーも開発者も現状の課題を整理しておきたい。