全2633文字
PR

 日産自動車と三菱自動車は、軽自動車の新型電気自動車(EV)を2022年夏に発売する。日産は「サクラ」、三菱自は「eKクロスEV」の車名で販売する(図1)。新型軽EVの開発は、三菱自と日産の共同出資会社「NMKV」(東京・港)が担当した。三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)で生産している。

日産と三菱自の新型軽EV
図1 日産と三菱自の新型軽EV
(a)日産は「サクラ」、(b)三菱自は「eKクロスEV」の車名で22年夏に発売する。軽専用のプラットフォームを適用した。(撮影:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]

 車両価格(消費税込み)はサクラが233万3100~294万300円、eKクロスEVは239万8000~293万2600円だが、国の補助金注1)の対象になるため、100万円台後半の価格から購入できる。

注1)21年度補正予算の「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」と、22年度予算の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象となり、55万円の補助金を受けた場合の実質的な購入額は200万円を切る。

 EVの開発を巡っては、ホンダが小型SUV(多目的スポーツ車)タイプのEVを、300万円台で投入する計画を進めている。トヨタ自動車も小型EVで同水準の価格の実現を目指す。こうした小型EVの開発動向を見ると、軽EVとしては少なくとも200万円台の車両価格を実現しないと普及させるのは難しい。

現行電動車両のPFや部品を活用

 そこで日産と三菱自は、今回の新型軽EV(以下、新型車)の最低価格を200万円台前半に抑えるために、設計・開発面と製造面でいくつかの対策を行った。これまで、EVは販売台数が増えないと利益が出ないとされてきたが、今回の新型車は販売台数が少なくても「1台当たりの利益を確保できている」と、日産オートモーティブテクノロジーの車両プロジェクト統括部で車両設計グループ主管を務める遠藤雅哉氏は明かす。

 設計・開発面ではまず、日産の軽ガソリン車「デイズ/ルークス」や三菱自の同「eKシリーズ」に適用する軽自動車用プラットフォーム(PF)を使う。PFの共用でコストを抑えた。同PFはガソリン車とEVの両方に適用できるように開発したため、大きな改良を加えることなく、電動パワートレーンや電池パックを搭載できるという。

 電動パワートレーンでは、インバーターは新たに開発したが、駆動用モーターには、日産のシリーズ式ハイブリッド車(HEV)「ノートe-POWER」や、三菱自のプラグインハイブリッド車(PHEV)「アウトランダーPHEV」などに搭載する小型モーターを使った。減速機は日産のEV「リーフ」のものを流用した(図2)。

新型軽EVのパワートレーン
図2 新型軽EVのパワートレーン
現行の電動車両のモーターや減速機を使うことでコストを抑えた。(出所:三菱自動車)
[画像のクリックで拡大表示]

 リチウムイオン電池は、中国系のエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)から調達した。日産のリーフはAESCグループの電池を搭載しており、新型車もリーフと同じ電池を使う。このように、現行の電動車両と基幹部品をできるだけ共有することで、新型車の設計・開発コストの増加を抑えた。