日産自動車と三菱自動車が2022年6月16日に発売した軽自動車タイプの新型電気自動車(EV)は、ボディー骨格を改良し、超高張力鋼板を多用することなどで全方位(前面、側面、後面)の衝突安全に対応した。ただ、200万円台前半の車両最低価格を実現するため、ボディー骨格にはいくつかのコスト抑制対策を施した。
軽自動車は小型車に比べて車両寸法は小さいが、衝突時に乗員を守るため、小型車や中型車と同水準の衝突安全性能が求められる。また、今回の新型軽EV(以下、新型車)は乗員に加えて、床下に搭載した電池パックも衝突時の衝撃から守る必要がある。今回の新型車は高強度ボディー骨格を適用し、これらの課題に対応した。(図1)。
軽で初めてホットスタンプを適用
新型車は全方位の衝突安全に対応するため、引っ張り強さが980MPa級以上の超高張力鋼板を、ボディー骨格の28%(質量比、以下同じ)に適用した。内訳は1.5GPa級のホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)が9%、1.2GPa級の冷間プレス材が6%、980MPa級の冷間プレス材が13%である(図2)。
日産の軽ガソリン車「デイズ」の場合、980MPa級以上の超高張力鋼板の使用比率は16%であり、内訳は1.2GPa級の冷間プレス材が5%、980MPa級の冷間プレス材が11%である。ホットスタンプは使っていない(図3)。日産と三菱自が軽自動車のボディー骨格にホットスタンプを適用するのは、今回の新型車が初めてだ。
新型車でホットスタンプを使ったのは、(1)3本のフロア・クロス・メンバー、(2)フロントピラーの補強材、(3)ダッシュボード下のフロント・サイド・メンバー、(4)後席下のリア・サイド・メンバーである。また、車両の前後を通す2本のメインフレームには、1.2GPa級の冷間プレス材を適用した。