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 新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置が2022年3月下旬に解除されてから1カ月超、人々の移動が活発になる中で、ビジネスパーソンの働き方にはどんな変化が起こっているのか――。2020年4月から定期的に実施してきたテレワーク調査の最新結果を見ると、興味深い傾向が浮き彫りになった。

 日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは「働き方改革に関する動向・意識調査」を2020年春から定期的に実施しており、2022年4月は5回目となる。最新の5回目調査では同年2~3月における重点措置の最中と、3月以降の解除後について、テレワークの実施状況などを聞いた。

 まずは2~3月(重点措置の最中)の結果だ。同期間中に「あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と尋ねたところ、「週3日以上」と答えた人は46.3%だった。

 重点措置が全面解除された3月以降について聞くと、週3日以上テレワークする人の割合は41.9%だった。重点措置の解除により、同割合は4.4ポイント下がった格好だ。

週3日以上テレワークする人の割合の変化(青い部分)。まん延防止等重点措置の解除前後で4.4ポイントしか変わらなかった
週3日以上テレワークする人の割合の変化(青い部分)。まん延防止等重点措置の解除前後で4.4ポイントしか変わらなかった
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)
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テレワーク実施率の「振れ幅」が縮小

 重点措置や緊急事態宣言が発出されるとテレワークの実施率が上がり、解除されると下がる。このようなジグザグ傾向は新型コロナウイルスの感染症が広がり始めた2年前から継続している。過去の調査データを振り返ってみる。

 2020年4月に最初の緊急事態宣言が発出された直後は、週3日以上テレワークした人の割合は同63.9%だった。宣言解除後の2020年10月時点で同41.9%まで下がり、再び緊急事態宣言が発出された2021年1~2月には50.9%へと上昇。解除後の2021年3~4月は38.5%に低下した。2021年7~9月の緊急事態宣言中は54.0%まで上がり、解除後の2021年10月は40.8%に下がった。

全5回の関連調査で「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」との質問に「週3日以上」と答えた人の割合を時系列で並べた
全5回の関連調査で「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」との質問に「週3日以上」と答えた人の割合を時系列で並べた
(出所:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)
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 グラフにしてみると、上下のジグザグ傾向は続いているものの、「振れ幅」は小さくなっていると分かる。2020年は緊急事態宣言が解除されると週3日以上テレワークする人の割合は22.0ポイントも減った。その後2021年には振れ幅が12.4~13.2ポイントまで縮小。直近の2022年調査では、重点措置の最中と解除後の差が4.4ポイントまで縮んだ。

 今の傾向が続くと仮定すると、週3日以上テレワークする人の割合は40~45%あたりに収束するかもしれない。一方でこの先、緊急事態宣言などが発出されなければテレワーク実施率が右肩下がりに落ちていく可能性もある。

 テレワークの本質はデジタル技術を活用した働き方改革であり、生産性の向上や付加価値の創出など、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)を成し遂げるための環境整備である。テレワークの実施率を維持することが目的となってしまっては本末転倒だ。とはいえオフィスへの出社に全面回帰するのも現実的ではないだろう。

 生産性アップや付加価値の創出といった観点から、最適な働き方を模索し続ける努力が引き続き求められる。