2008年施行の改正建築士法で登場した構造設計1級建築士、設備設計1級建築士。一定規模以上の建築設計で関与が義務付けられ、引く手あまたの資格だが、ハードルは高い。取得事情を探った。
2022年1月時点で、構造設計1級建築士(以下、構造1級)の修了認定を受けた人数は、累計1万1069人(みなし講習修了者6677人を含む、建築技術教育普及センターまとめ)。制度施行から10年以上が経過した今も、希少性が高い資格といえる。
直近の21年度修了考査を突破したのは676人中202人で、修了(合格)率は29.9%。過去10年にわたり、これと同様の3割前後で推移してきた〔図1〕。
3000人超の構造1級有資格者を組織する日本建築構造技術者協会(JSCA)は、講習受講者に向けた講習なども実施、養成に力を入れてきた。ただ、複数のJSCA会員に話しを聞いたところ「優秀なのだけれど『仕事が忙し過ぎて資格が取れない』という人もいる」という悲鳴も漏れる。
構造1級講習の受講には、1級建築士資格を取得して5年以上の業務経験が必要だ〔図2〕。このため受講者は「どの会社でも重要な戦力である、入社7~10年目という世代が中心になっている」(中塚光一・大林組設計本部統括部長)。この世代は新試験制度の開始前に就職しており、1級建築士取得に時間がかかってきたことも背景にある。
構造担当者は複数のプロジェクトを掛け持ちしていることも多い。「少し仕事を抑え、資格の勉強を優先させるマネジメントも必要になっている」(小林秀雄・日本設計執行役員監理群長)
小林氏は「資格は技術や知見を社会的に証明するもの。構造設計者なら構造1級は必須だ」と強調する。同社の構造部門では、1級建築士、構造1級と資格取得を進めることが、給与等級に直結しているという。