今回はiPhoneを無線LAN(Wi-Fi)に接続する際のトラブルについて取り上げる。「つながらない」「遅い」といった症状に対し、原因や対処法を解説する。
WPA3使用時の接続障害
Wi-Fiには盗聴や不正アクセスなどの攻撃を防ぐセキュリティー規格が標準で定められている。現在、最も堅固と考えられている最新規格は2018年に決められた「WPA3」。そして今一般的に使われているのは前の世代の「WPA2」である。
WPA2で通信できるが、WPA3では通信できないという事象はよくみられるという。「キーの交換がうまくいかなくて接続できないことはよくあり、ネットワーク機器のバグだったり端末の不具合だったり、原因としては統一性がみられないが、問い合わせとしては多い。例えば、WPA2のPSKは接続可能だけれど、WPA3のSAEで接続できなくなったという事象だ」(ユニアデックス テクニカルサポートセンター ストラテジックネットワーク部 二課の布施 奈緒美氏)。
ネットワンシステムズは、iPhoneなどのアップル製品に限らず、WPA3はまだ成熟しておらず、導入するのは時期尚早ではないかと指摘する。「チップメーカーも含め、各メーカーが実装している認証や暗号化の機能が一致していないところがあると聞いている」(ネットワンシステムズ ビジネス開発本部 応用技術部 ネットワークチームの丸田 竜一氏)。
ただ、「WPA2にはKRACKsという脆弱性があるので、恐らく今後数年かけてWPA3に順次置き換わっていくのではないか」(ネットワンシステムズ ビジネス開発本部 応用技術部 セキュリティチームの田中 政満氏)。
現状、特に問題が起こりやすいのは、1つのSSIDでWPA2とWPA3の両方を有効にする「ミックスモード」での運用だ。理屈の上では、WPA2対応の端末はWPA2で接続し、WPA3対応の端末はWPA3で接続する。だが実際は、WPA3ではうまく接続できないケースがみられるという。
セキュリティーについては最高のものにしたいので今すぐにWPA3の導入を望む企業の場合、「WPA2とWPA3にはそれぞれ別のSSIDを用意する運用をお勧めする。ミックスモードは推奨しない」(ネットワンシステムズの田中氏)としている。どうしてもミックスモードで運用したい場合、事前にテスト環境を用意して、接続したい端末がミックスモードでもきちんと通信できるかどうかを確認してから展開すべきだとアドバイスする。
また米Apple(アップル)のほうでもiOSのアップデートによりiPhoneの接続性を改善しているようだ。Wi-Fi機器メーカーのヤマハが相互接続試験を実施したところ、2021年3月時点で接続できなかったものが、最近の試験では接続できるようになったという。
AP | クライアント | OS | WPA3-EAP 192ビット暗号使用 | WPA3-EAP 192ビット暗号不使用 |
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WLX413(Rev.22.00.01) | iPhone 11 Pro MAX | iOS 14.3 | ×(接続不可) | ×(接続不可) |
WLX413(Rev.22.00.01) | MacBook Air (M1) | macOS Big Sur 11.1 | ×(接続不可) | ×(接続不可) |
WLX413(Rev.22.00.02) | iPhone 11 Pro MAX | iOS 14.3 | ○(接続可) | ×(接続不可) |
WLX413(Rev.22.00.02) | MacBook Air (M1) | macOS Big Sur 11.1 | ○(接続可) | ×(接続不可) |
AP | クライアント | OS | WPA3-EAP 192ビット暗号使用 | WPA3-EAP 192ビット暗号不使用 |
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WLX413(Rev.22.00.02) | iPhone 11 Pro MAX | iOS 15.0.2 | ○(接続可) | ○(接続可) |
WLX413(Rev.22.00.02) | MacBook Air (M1) | macOS Big Sur 11.6 | ○(接続可) | ○(接続可) |