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東京大学大学院工学系研究科教授の中尾彰宏氏は、5G(第5世代移動通信システム)の通信ネットワークを民間企業などが独自に構築できる「ローカル5G」の普及に腐心する。目指すは通信事業者だけではなく、一般企業なども一丸となって技術を発展させる情報通信の「民主化」だ。ボトムアップによる通信産業の革新を狙っている。(聞き手は高市清治、吉田 勝、岩野 恵)

東京大学大学院工学系研究科教授の中尾 彰宏氏
東京大学大学院工学系研究科教授の中尾 彰宏氏
(写真:加藤 康)
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 私が技術顧問を務める FLARE SYSTEMS(東京・文京)は、最新の通信規格である「5G」のコンサルティングやシステムの構築、運用を手掛けています。もちろん、免許を取得した企業などが所有する敷地など、範囲を限定して5Gの通信ネットワークを構築する「ローカル5G」がメインです。

 設立は2021年7月。オリジナルの無線設計の基地局を使って、シンプルかつ低コスト・短期間でローカル5Gによるネットワークの構築を支援します。基地局の対応周波数帯は4.5GHz帯のいわゆる「Sub6」です*1。既に、自治体を中心に10件程度受注しています。例えば岩手県では遠隔教育に、山梨県では富士山登山道を監視する実証実験にて基地局を活用してもらいました。

*1 日本国内では周波数が4.5GHz帯のうち4.6~4.9GHz、28GHz帯のうち28.2GHz~29.1GHzをローカル5Gに割り当てている。前者を「Sub6」、後者を「ミリ波」と呼ぶ。

品質を担保しつつ低価格を

 現在、FLARE SYSTEMSは、価格破壊を起こすため、さまざまな挑戦がなされています。ベンダー各社もローカル5Gネットワーク構築サービスの料金を下げ始めていますが、FLARE SYSTEMSは、品質を犠牲にすることなく、ユーザビリティーの向上、低価格化の先導に挑んでいます。ローカル5Gのネットワーク構築サービスには、基地局などのハードウエアや構築時のコンサルタント料に加えて、メンテナンス費、運営費用などがかかります。そのトータルコストの価格破壊を目指しているのです。

FLARE SYSTEMSが提供しているローカル5Gの基地局
FLARE SYSTEMSが提供しているローカル5Gの基地局
最大出力+23dBm(200mW)で、最大スループットはダウンロードが800Mbps、アップロードは220Mbps(いずれも理論値)。消費電力150W以下で、質量は約20kg。大きさは240×470×530mm。(出所:FLARE SYSTEMS)
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基地局の内部
基地局の内部
マザーボードやヒートシンクなどほとんどの部品に市販品を用いて情報通信の進化・促進を狙っている。(写真:日経クロステック)
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 FLARE SYSTEMSでは、ローカル5Gの普及にはサービス料金の低価格化が必要とみています。しかし「安かろう悪かろう」のイメージをつくらないよう、目指しているのはあくまで品質を担保した上での低価格です。ローカル5Gの普及は、通信事業でかつてなかった「通信の民主化」を進め、ひいては通信技術やビジネスの革新につながると考えています。