米Google(グーグル)が2022年5月に開催した年次カンファレンス「Google I/O 2022」で、AI(人工知能)に関する野心的なロードマップを示した。人間が書いたような自然な文書を生成できるAIツールを年内にも一般ユーザー向けに公開するほか、テキストだけでなく画像なども扱える「マルチモーダル」のAIをGoogle検索に実装する計画だ。
Google I/O 2022の基調講演でSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)CEO(最高経営責任者)は、文章の内容を理解したり新たに生成したりできる言語モデルと呼ばれるAIを2つ紹介した。1つは自然な質疑応答ができるAIである「LaMDA 2」、もう1つは自然言語に関する様々なタスクを1つのモデルで処理できる汎用AIの「PaLM」だ。
会話からTo Doリストを作ってくれるLaMDA 2
グーグルはまもなく一部の限られたユーザーに対して、質疑応答ができるLaMDA 2を搭載したツールである「AI Test Kitchen」を提供する。AI Test KitchenはLaMDA 2が備える質疑応答や文書生成の能力を気軽に試せるツールだ。
AI Test Kitchenが備えるデモ機能は3つある。1つめはユーザーがある場所の名前を与えると、その場所で起こりそうな面白いできごとをAIが創作する「Imagine It」。例えば「海で最も深い場所」と入力すると、AIは「海の底では巨大なヘビのような生き物があなたの頭の上を泳ぎ回っています。ウツボが手を振っているように見えます」といった文章を創作する。
2つめはユーザーが何らかのタスクを与えると、そのタスクを処理するためのTo DoリストをAIが作り出す「List It」。例えば「家庭菜園をつくりたい」と入力すると、AIは家庭菜園をつくるためのTo Doリストを「菜園の種類を選ぶ」「菜園の場所を選ぶ」「種や苗を買ってくる」「散水の用意をする」「ペットが入ってこられないようにする」といった具合に創作する。
3つめはユーザーがどんな文章や単語を入力しても、犬に関する話題で応答する「Talk About It(Dogs Edition)」だ。
言語モデルへの「偏見」を取り除くのが狙い
グーグルがAI Test Kitchenを公開する狙いは、言語モデルにつきまとう偏見や信頼性に関する問題を改善することにある。言語モデルは学習データが内包する偏見(バイアス)を、そのまま引き継いでしまう問題を抱えている。差別的な表現を含む文章を学習すると、差別的な文章を生成するようになってしまうのだ。
グーグルは昨年のGoogle I/O 2021で、LaMDA 2の前バージョンである「LaMDA」を発表して以来、グーグル社内でLaMDAを従業員がテストして、暴力的な発言や差別的な発言をしていないかチェックを進めていた。問題のある発言を見つけた場合は開発チームにフィードバックし、モデルを修正してきた。AI Test Kitchenを公開することで、AIを改善する取り組みを社外にも広げ、加速させる狙いがある。
ピチャイCEOが紹介したもう1つの言語モデルPaLMは、1つの機械学習モデルで最大数百万種類のタスクに対応できる汎用AIである「Pathways」を使って開発したものだ。1つの機械学習モデルで質問応答や文書生成、多段階の論理的な思考、翻訳、ソースコード生成、ソースコード修正、さらにはジョークの解説といった様々なタスクを処理できる。
ピチャイCEOはPaLMが備える複数の能力の中でも、2つの興味深い能力を基調講演で紹介した。