自動車部品、特にこれまで内燃機関系の部品をこれまで事業の主軸にしてきた部品メーカーは、急いで次の事業の柱を構築する必要に迫られています。自動車・モビリティー産業のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の波の中で、他社と連合して電動化や自動運転に必要な次世代部品の技術を開発・獲得したり、垂直統合から水平分業にシフトして技術を他社と共有したりと、さまざまな施策が考えられます。

 これらを実現する上でカギを握るのは、自社が培ってきた強いコア技術をつかさどっている開発関連の部門(研究・開発・設計・生産技術)の改革、すなわち開発イノベーションです。部品メーカーが開発イノベーションを進めるに当たって検討すべき内容は非常に多岐にわたりますが、筆者らの経験から、本連載で紹介する15個が代表的なテーマだと考えています。

 この15のポイントと、問題や課題をどのようにとらえるかのフレームワーク(枠組み)について、筆者らがコンサルティング業務を通して得た知見や新たに実施した実態調査の結果などを踏まえて解説します。

渡辺 智宏(わたなべ・ともひろ)
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 自動車・産業機械セクター 部品インダストリーチーム リーダー
渡辺智宏

大手ITベンダーにて業務/組み込みシステム開発、プロジェクト・マネジメント、ソフトウエア技術の研究・開発などに携わる。その後、国内外の大手コンサルティング会社を経て現職。製造業のR&D領域における業務・組織改革、事業・技術戦略立案、新規事業開発、モジュール化、品質改善、プライシング、原価企画、PLMシステム導入などのコンサルティング、セミナーに数多く携わる。主な専門業界は通信・ハイテク、自動車および輸送機器、産業機械、ロボット・FAなど。技術に加えて、マネジメントやビジネスの知見を併せ持つR&D部門への変革を支援する。主な著書に、「『ビッグデータ』という言葉に踊らされないための品質の基本」、「技術を強みとした新規事業開発の教科書」、「製造業R&Dマネジメントの鉄則」など。など。その他新聞や雑誌、Web媒体などへの執筆・連載も多数。

水田 大哉(みずた・ひろや)
PwCコンサルティング合同会社 自動車・産業機械セクター 部品インダストリーチーム マネージャー
水田大哉

大手自動車メーカーで設計業務に長年従事し、乗用車、電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車などの先行~量産開発まで幅広くプロジェクトに携わり、自動車業界のR&D領域の経験豊富。現職にて製造業のR&D部門を中心とした業務プロセス改革、PLM導入、CAD・PDM刷新によるデジタル改革、原価企画、グローバルBOM構築などの変革支援プロジェクト支援に携わる。また、MaaS(Mobility as a Service)やサイバーセキュリティーに対する動向調査・事業案件調査・ソリューション開発、新規事業開発の市場調査・分析など多岐にわたりプロジェクトへ参画。
<代表的な支援プロジェクト>大手自動車メーカー:業務変革プロジェクト/自動車部品メーカー:BOM構築支援プロジェクト