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 前回は、部品メーカーの開発現場でよく見られる問題の実態を解説しました。今回はそれを踏まえて、今後、開発機能のマネジメント(以下、開発マネジメント)はどのような姿を目指すべきかについて述べたいと思います。

* 開発機能には、研究や開発を行っている部署だけでなく、品質保証や生産技術など、研究開発のサポートや開発と生産のつなぎを行っている部署も含むと考える。

開発マネジメントのフレームワーク

 開発マネジメントの目指す姿を考える上で、まずマネジメントの視点としてどのようなものがあるかを解説します。筆者らは、開発マネジメントのフレームワーク(枠組み)を図1のように捉えています。

図1 開発マネジメントのフレームワーク
図1 開発マネジメントのフレームワーク
3つのフレーム「開発戦略」「開発プラットフォーム」「開発推進力」により、経営・事業目標から、開発現場での活動を通して事業成果までのつながりを重視する。(出所:PwCコンサルティング)
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 フレームワークの全体像は「開発戦略」「開発プラットフォーム」「開発推進力」の3つのフレームで構成します。開発マネジメントでは、経営・事業目標の達成を念頭に置きつつ、この開発戦略、開発プラットフォーム、開発推進力を三位一体で一貫して進めることが重要であると捉えています。このフレームワークを9個の視点にブレークダウンし、それぞれの達成水準によって開発マネジメントの状況を総合的に把握でき、改善のための方針が明らかになると考えています。

 次に、3つのフレームそれぞれをブレークダウンした視点について説明します(図2)。

図2 開発マネジメントにおける9の視点の概要
図2 開発マネジメントにおける9の視点の概要
「開発戦略」「開発プラットフォーム」「開発推進力」をそれぞれブレークダウンする。(出所:PwCコンサルティング)
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開発戦略の視点

 開発戦略は、経営・事業の目標・方針に基づいて設定した、開発機能全体の目標とその達成に向けた方針です。その立案に際しては、「製品・サービス戦略」「組織・人材戦略」「投資戦略」という視点から詳細に検討します。

 「製品・サービス戦略」では、中長期的な経営目標を達成するために必要となる製品・サービスの創出計画立案に取り組んでいきます。商品・サービスロードマップの立案、技術ロードマップの立案などが、この視点に含まれます。

 「組織・人材戦略」では、製品・サービス戦略の実行に適した組織の構築、有能な人材の採用・育成に向けた中長期的な計画立案に取り組んでいきます。技術人材ロードマップの立案、技術組織構築・獲得計画の立案などがこの視点に含まれます。

 「投資戦略」では、製品・サービス戦略の実現において必要となる各種経営資源の適切な投入計画の立案に取り組んでいきます。研究開発投資計画の立案などがこの視点に含まれます。

開発プラットフォームの視点

 開発プラットフォームは、開発戦略を実現するために必要な業務基盤(仕組み)を指します。ここでは「プロセス」「製品モジュール」「ナレッジ/技術資産」「ツール/設備」という4つの視点から詳細に見ていきます。

 「プロセス」の視点からは、開発機能の各業務プロセス整備に取り組んでいきます。業務標準化の取り組みはこの視点に含まれます。

 「製品モジュール」では、製品やサービスのシリーズを俯瞰(ふかん)的・横断的に見据えた上で、適切なモジュール・部品構成の整備に取り組んでいきます。製品標準化の取り組みはこの視点に含まれます。

 「ナレッジ/技術資産」では、過去の開発で蓄積された技術理論や実験データ、開発標準、技術資料、図面、品質問題対策資料など技術資産の整備に取り組んでいきます。ナレッジマネジメントの取り組みはこの視点に含まれます。

 「ツール/設備」では、PLM(製品ライフサイクル管理)システムや開発に必要なデジタルツール、各種設備の整備に関する課題解決に取り組んでいきます。BOM(Bill of Materials、部品表)や図面、技術文書など技術情報を管理するPLMシステムの整備、設計・解析や評価ツール、プロジェクト管理ツールなど、開発機能のさまざまな業務を支援するデジタルツールの整備、試作設備や評価設備の整備などがこの視点に含まれます。

開発推進力の視点

 開発推進力は、開発プラットフォームの意義を理解し、最大限に活用して、経営・事業目標の達成に向けた効果的・効率的な開発業務の推進を行っていく能力です。開発推進力を高めるために「プロジェクトマネジメント」と「組織運営」の2つの視点から詳細に検討していきます。

 「プロジェクトマネジメント」では、各種開発プロジェクト(研究プロジェクト、技術開発プロジェクト、新製品開発プロジェクト、既存製品カスタマイズ設計プロジェクトなど)で設定されている売り上げや売価、QCD(品質・コスト・納期)の目標を達成するために、開発プラットフォームを活用したプロジェクト推進に取り組みます。プロジェクトマネジメント改革に加えて、1人が複数テーマを掛け持ち対応することで効率化するなどの取り組みもこの視点に含まれます。

 「組織運営」では、開発機能に所属する各部署の運営や、プロジェクトへ投入するメンバーに対する教育の課題に取り組みます。技術人材育成、技術者の工数管理/負荷平準化、開発プロジェクトへのリソースアサイン調整、組織風土の活性化などの取り組みがこの視点に含まれます。

 「プロジェクトマネジメント」が目先の開発プロジェクトの目標達成という短期的な成果獲得を目的にしているのに対して、「組織運営」では開発機能に包含される各部署の持続的発展という中長期的な成果獲得を目的に据えます。