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3. 業績が良い傾向の企業は、開発マネジメント水準が高い傾向にある
 [業績と開発マネジメント水準]

 次は、過去5年間の業績の上昇/下降傾向と、開発マネジメント水準項目の関係性についての結果です。開発マネジメント水準全般および各開発マネジメント項目水準について「高水準」の企業と「低水準」の企業で、「業績は上昇傾向」という回答にどの程度の開きがあるかを見てみると、以下のような結果となりました(図12、13)。

* アンケートでは、開発マネジメント水準に関しては図1に示した9項目についてそれぞれ聞き、別の設問で過去5年間の業績が上向きか下向きかを聞いた。従って業績と開発マネジメント水準の関係について9通りのクロス集計結果を得ている(図13)。個々のクロス集計だけでは全体が分かりにくいため、開発マネジメント水準全般の指標として9項目の集計結果の平均を図12に示す。
【開発マネジメント水準全般】
  • 開発マネジメント水準9項目についての平均では、「開発マネジメントが高水準」の場合の「過去5年間の業績が上昇傾向にある」との回答は、「開発マネジメントが低水準」の場合の「過去5年間の業績が上昇傾向にある」との回答より2.13倍(25.3%→54.0%)多い
  • 同じく開発マネジメント水準9項目についての平均では、「開発マネジメントが高水準」の場合の「過去5年間の業績が下降傾向にある」との回答は、「開発マネジメントが低水準」の場合の「過去5年間の業績が下降傾向にある」との回答より0.71倍(29.5%→20.9%)と少ない
図12 過去5年間の業績と開発マネジメント水準(9項目平均)の関係性
図12 過去5年間の業績と開発マネジメント水準(9項目平均)の関係性
(出所:PwCコンサルティング)
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図13 過去5年間の業績と開発マネジメント水準(個別)の関係性
図13 過去5年間の業績と開発マネジメント水準(個別)の関係性
(出所:PwCコンサルティング)
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【開発マネジメント水準各項目】
  • 「製品・サービス戦略」について「高水準」と回答した企業と、同項目について「低水準」と回答した企業との間では、「業績が上昇傾向」とした回答数の開きが3.69倍(18.4%と67.9%)と、開発マネジメント水準9項目の中で最も大きかった
  • 同じく「製品・サービス戦略」について「高水準」と回答した企業と、同項目について「低水準」と回答した企業との間では、「業績が下降傾向」とした回答数の開きが4.61倍(32.7%と7.1%)と、開発マネジメント水準9項目の中で最も大きかった

 これらより、企業の業績にダイレクトに影響している開発マネジメント水準項目は「製品・サービス戦略」であると推察できます。

開発マネジメントの水準向上がQCD改善と業績向上に有効

 以上、「業績とQCD問題」「QCD問題と開発マネジメント水準」「開発マネジメント水準と業績」の3つの関係について調査結果を見てきました。開発マネジメント水準の高度化により、業績向上またはQCD問題の改善ができると示唆する結果が得られています。業績をダイレクトに上げるためには「製品・サービス戦略」を強化し、開発のQCD問題を改善するためには「投資戦略」(品質)、「製品モジュール」(コスト)、「ナレッジ・技術資産」(スケジュール)といった開発マネジメント項目の水準を強化することが重要であるとうかがえます。

 また、QCDの問題の有無と業績の良しあしにも関係性が見られることから、業績アップに向けては、製品・サービス戦略の強化だけでなく、開発のQCD問題の改善に必要な開発マネジメント項目の水準の強化も有効であるといえます。

部品メーカーの開発マネジメント水準

 自動車部品メーカーは他の業種と比較して、開発マネジメントがどのような水準にあるのでしょうか。調査では「機械部品・電子部品メーカー」というくくりで聞いており、ここに自動車部品メーカーを含みますので、「機械部品・電子部品メーカー」についての結果を見ていきます。

 図14図15に各業種の開発マネジメント水準の平均点を示します。これは、レベル1を1点、レベル2を2点、以下同様にレベル5まで、レベルを点数に置き換えて算出した結果です。図14は開発マネジメント9項目全部について平均した点数で、回答者全体では2.10点であるのに対して、「機械部品・電子部品メーカー」は2.07点と、やや下回る結果となっています。

図14 業種別の開発マネジメント水準(9項目平均)
図14 業種別の開発マネジメント水準(9項目平均)
(出所:PwCコンサルティング)
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 もう少し詳細に、先述した業績やQCD水準を引き上げるキーとなりそうな「製品・サービス戦略」「投資戦略」「製品モジュール」「ナレッジ・技術資産」について業種別のデータを見てみます(図15)。

図15 業種別の開発マネジメント水準(製品・サービス戦略、投資戦略、製品モジュール、ナレッジ・技術資産)
図15 業種別の開発マネジメント水準(製品・サービス戦略、投資戦略、製品モジュール、ナレッジ・技術資産)
(出所:PwCコンサルティング)
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 「製品・サービス戦略」では、全体平均の2.41点に対して機械部品・電子部品メーカーは2.31点と下回っていますが、「投資戦略」では全体平均の2.04点に対して2.13点、「製品モジュール」では全体平均の2.07点に対して2.08点、「ナレッジ・技術資産」では全体平均の2.09点に対して2.31点と上回っています。

 これらの結果から、QCD問題を改善させる取り組みは平均以上に行っているものの、ダイレクトな業績アップに寄与しやすい製品・サービス戦略の強化が、自動車部品メーカー全般の課題ではないかと見て取れます。

 今回紹介した開発マネジメント実態調査の結果から、開発マネジメント水準のレベルアップが業績向上にもQCD問題の改善にも寄与することが示されました。各社が開発マネジメント項目で課題を抱える部分を抽出し、それぞれの課題に応じた改革・改善テーマに取り組んでいくことが重要です。

 次回は、これらさまざまな開発マネジメント項目の水準を高めていくために取り組むべき改革・改善テーマについて解説します。