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 前回までに概要を紹介した15の改革テーマの詳細について解説します。改革テーマの数が多いため、今回から3回にわたって5テーマずつ取り上げていきます。ちなみに、15の改革テーマは図1の通りです。

図1 開発イノベーションを実現する15の改革テーマ
図1 開発イノベーションを実現する15の改革テーマ
(出所:PwCコンサルティング)
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 今回解説するテーマは、以下の5つです。

  1. 未来の洞察・創造
  2. 戦略の明確化・具体化
  3. テーマの取捨選択
  4. 外部連携・M&A強化
  5. 技術開発・蓄積

1. 未来の洞察・創造

 既存の延長線上の製品・サービス開発では事業の存続が難しい状況であれば、自動車以外の産業まで幅広く見据えて新たな市場・顧客を見いだし、開発テーマを検討していかなければなりません。そのような場合、今後10年を超えるような未来を描く必要も出てきます。

 10年以上先の未来を描くアプローチには大きく分けて「フォーキャスト型」と「バックキャスト型」の2種類があります。フォーキャスト型は、10年以上先であっても、現状の延長線上でおおむね検討できる市場に対するアプローチです。将来の姿について、社会や業界で既にコンセンサスが得られていて、ロードマップなども明確で、あとはそれに沿ってビジネスを展開していくような市場が該当します。

 一方、バックキャスト型は将来の姿がかなり不透明で、この先どうなるか見通しが立てにくい市場に対してのアプローチです。これは、テクノロジーが新しく、1つの発明が次の発明を誘発し、結果として変化のスピードが雪だるま式に加速していくという特徴の強い市場が該当します。このような市場の場合、現状の延長線上で予測できる未来は長くても5年程度です。それ以降の未来を構想するには、起こり得る未来を斬新な発想で描き、その未来を実現するには何が必要かを検討(バックキャスト)し、自ら主体的に創っていくといった、特別な取り組みが必要になります。

図2 将来が不透明な市場に対する、未来の洞察・創造の必要性
図2 将来が不透明な市場に対する、未来の洞察・創造の必要性
(出所:PwCコンサルティング)
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 未来を洞察・創造していく具体的な1つの方法を以下に提示します。

(1)重点検討領域の設定
 まず、洞察したい将来(2040年など)についての情報を整理します。メガトレンド(今後の世界のあり方を形成するほどの影響力を持つ大きな流れ)や未来が想起される兆候の事例、産業構造の変化に大きな影響を及ぼしそうなキーワード(例:人口増加を制御する仕組みができる、睡眠が不要になる、など)、特許・研究論文情報などを抽出・整理していきます。

 その後、整理した情報の中から重点検討領域を設定します。重点検討領域とは、抽出・整理したキーワードをもう少し具体化したテーマで、単一/複数の産業構造を変革し得る、あるいは産業内の特定領域を変革し得るものです。これらのうち、自社として取り組みを進めていこうと考えられるテーマを設定します。例を挙げると、「全ての物をエネルギー/資源に変換する社会と経済」「あらゆる人の働き方を肯定する社会」などです。

(2)未来の世界観の設計
 設定した重点検討領域に対して、未来全体を具体的に構想していきます。関連する未来の予兆に関する情報を多方面から調査・分析します。そして、描いた未来に存在するコンシューマー(生活者)やビジネスユーザーを想起し、その人たちが保有しそうな価値観や文化、ニーズやウォンツなどを検討します。

(3)未来サービス~技術開発テーマ検討
 描いた未来の世界観を踏まえて、そこで必要となる製品・サービスを構想・具体化していきます。そして、その製品・サービスを実現するために必要となる技術コンセプトを抽出していきます。例えば、「さまざまな人と人間関係の新しい形を構築できる『コミュニティ・コーディネーション・サービス』」「デジタルツイン同士を相互作用させ、その影響をシミュレーションする技術」などです。

図3 未来の洞察・創造アプローチ
図3 未来の洞察・創造アプローチ
(出所:PwCコンサルティング)
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