日立製作所と日立Astemo(日立アステモ、東京・千代田)は、電気自動車(EV)に向けた新たなインバーター技術を開発した。同技術を用いた試作品を日立アステモが、「人とくるまのテクノロジー展2022」(2022年5月25~27日開催、パシフィコ横浜)で公開した(図1)。
今回の試作品に搭載した基本技術は日立が開発し、日立アステモは製品開発を進めている。日立アステモの従来の電動車両向けインバーターに比べて約50%の小型化と、パワー半導体がスイッチ動作をする際のエネルギー損失を約30%注1)低減したのが特徴である。小型EVや軽EVなどの小さなクルマへの採用を目指す。採用時期は27~28年を想定する。製品価格は、従来品よりも20~30%下げるのが目標だ。
インバーターは主に、パワー半導体と回路部分で構成する。パワー半導体は大電流を流すと発熱するため、従来品ではパワー半導体と回路部品を別々に組み立て、これらを配線で接続していた。そのためインバーター全体が複雑な構造となり、小型化やエネルギー損失の低減が難しかった。
プリント基板上にパワー半導体を実装
また、従来のインバーターは「バスバー」 と呼ぶCu(銅)板製の部品を使って、パワー半導体と回路部分を溶接していた。そのため、部品点数や組み立て工程が多くなり、生産効率を高めるのが難しかった。今回の試作品では、プリント基板上にパワー半導体を実装し、バスバーを無くした。基板上にパワー半導体を実装するためのモールド技術は日立が開発した(図2)。
その結果、インバーター内部の電力配線が減って、インダクタンス注2) を低減できるようになり、パワー半導体のエネルギー損失を従来品に比べて約30%低減できた。インバーターの体積も従来品に比べて約50%小型化することに成功した。バスバーを無くしたことで部品点数を減らせるため、製造コストを抑えられる利点もある。
パワー半導体の材料にはSiC(炭化ケイ素)ではなく、Si(ケイ素)を使った。「SiC半導体のコストは、Si 半導体より3倍近く高い」(日立)ためである。また基板の冷却方式には、日立アステモが開発した両面水冷方式を採用した。