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 トヨタ自動車はブロックチェーン技術を活用したデータ保全プラットフォーム「Proof Chain of Evidence(PCE、ピース)」を、2022年5月25~27日開催の「人とくるまのテクノロジー展2022」(パシフィコ横浜)に出展した。

 新型コロナウイルス禍の影響により、紙から電子データへの移行が進んでいるものの、電子データは複製や改ざんが比較的容易とされる。そこでトヨタは、ブロックチェーン技術を手掛けるスタートアップ企業のScalar(東京・新宿)と共同で、電子データの証拠を保全する新たな仕組みとしてPCEを開発した。電子データの証拠力を高め、知財係争・訴訟への対応力を強化することを目指す。

ブロックチェーンで社内データを守る
ブロックチェーンで社内データを守る
(出所:トヨタ自動車)
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 22年3月末までにシステム開発やPoC(Proof of Concept、概念実証)を済ませ、現在はトヨタの製造技術系と事業企画系の2つの部署で試験運用を始めているという。ブロックチェーンを活用したデータ保全技術を導入したのは、「おそらく自動車業界では初めてではないか」(同社説明員)と話す。

PCEの開発フェーズ
PCEの開発フェーズ
(出所:トヨタ自動車)
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 製造技術系の部署では、材料の組成や製造プロセスに関する技術情報をブロックチェーンで守る。一般的に材料の組成や製造プロセスは特許化せず、非公開とすることが多い。そのため、サイバー攻撃などによって技術情報が漏れた場合には、競合他社が特許を取得してしまうなどのリスクがある。電子データをPCEで管理すれば、自社が先に発明していたことを証明できる(発明に対する先使用権の証明)。

 事業企画系の部署では、他社との共同研究開発に関する技術情報を管理・保護する目的で使う。他社との共同研究開発では、ノウハウを含む知財のコンタミネーション(複数の企業の知財が混ざってしまい、どちらの知財なのかが分からなくなる状態)が発生するリスクがある。PCEでデータを管理することで、こうした問題を回避する。

 PCEはクラウド基盤の「Microsoft Azure」上に構築しており、22年9月からはSaaS(Software as a Service)として他社に有償提供することも検討する。

 Scalarが提供する分散型台帳ソフトウエア「Scalar DL」の改ざん検知機能を利用して、電子データの証拠保全を行う。記録した電子データに対して、以下4点の証明が可能とする。(1)電子データがいつ存在していたのか(WHEN)、(2)電子データがどの順序で存在していたのか(SEQUENCE)、(3)電子データが存在していた時点から、これまで改ざんされていないのか(WHAT)、(4)上記について、10年を超えて証明する(LONG-TERM)。また、こうした情報をグローバル(日本、中国、欧州、米国)で、裁判の証拠として提出できる形で保全する。

 Scalar DLを使うことによって、これまでのブロックチェーン技術で課題となっていた大量の電子データに対する自動的な証拠保全が可能になるという。

 このほか、トヨタブースでは新型電気自動車(EV)「bZ4X」のベアシャシーなどを展示していた。

新型EV「bZ4X」のベアシャシー。奥に見えるのは燃料電池車(FCV)「ミライ」
新型EV「bZ4X」のベアシャシー。奥に見えるのは燃料電池車(FCV)「ミライ」
(撮影:日経Automotive)
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