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 ジヤトコは、2020年代半ばの市場投入を目指し、モーターとインバーター、ギアボックス(減速機と差動歯車装置)を一体化した電動アクスルの開発を進めている。22年5月25~27日開催の「人とくるまのテクノロジー展2022」(パシフィコ横浜)では、その試作品のカットモデルを出品した(図1、2)。

図1 同軸型の電動アクスル
図1 同軸型の電動アクスル
(撮影:日経クロステック)
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図2 3軸の平行軸型の電動アクスル
図2 3軸の平行軸型の電動アクスル
(撮影:日経クロステック)
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 同社が出品したのは、同軸型と3軸の平行軸型の2つの電動アクスルのカットモデルである。いずれも最大出力が100~150kWのもので、静粛性が高く小型な点が強みとする。

 同社の説明員によれば、電気自動車(EV)ではエンジンがないことから、ギアのノイズが目立つ。同ノイズを低減するには、例えば、ギアの歯幅を増やしてかみ合いを大きくしたりするなどが必要になる。しかも、駆動に使うモーターの大きなトルクにも耐えられなければならない。

 同社では、自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)の開発や量産で蓄積してきたノウハウを活用し、そうした要件に適応させながらギアボックスを小型化することで差異化を図る考えだ。例えば、ギアのかみ合いをチューニングすることでより静かで小さなものにしている。さらに、同軸型では、遊星歯車機構の遊星キャリアーを差動歯車装置のケースと一体化し、遊星歯車装置の空いたスペースに差動歯車機構の一部を食い込ませるなどの工夫も施している(図3)。

図3 遊星歯車装置の空いたスペースに食い込ませた差動歯車機構の一部
図3 遊星歯車装置の空いたスペースに食い込ませた差動歯車機構の一部
(撮影:日経クロステック)
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 このようにギアボックスを小型化することで、一体型の電動アクスル全体の体積は、同じ出力のものなら、「同軸型で3分の2にできる。3軸の平行軸型では10%強減らせる」(同説明員)という。

 今回同社が出品した電動アクスルの主な仕様は、いずれも供給電圧が300~400V、モーターの回転数が最大1万6000rpm、出力トルクが2000~3400N・m。ギア比は、同軸型が8~10、3軸の平行軸型が8~12となっている。