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 方針転換を示唆していたトヨタ自動車系のアドヴィックスが動いた。20年以上こだわり続けてきた方式とは異なる電動油圧ブレーキの量産を開始した。採用第1弾はトヨタ自動車の電気自動車(EV)「bZ4X」である。「人とくるまのテクノロジー展2022」(2022年5月25~27日、パシフィコ横浜)で量産品を披露した(図1)。

図1 アドヴィックスの電動油圧ブレーキ
図1 アドヴィックスの電動油圧ブレーキ
「オンデマンド式」を同社として初めて採用したのが特徴だ。(撮影:日経Automotive)
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 電動油圧ブレーキは、エンジンの負圧を利用した負圧ブレーキブースターの代わりに、ブレーキの油圧をモーターで作り出す電動ブレーキブースターを使うもの。「アキュムレーター式」と「オンデマンド式」に大別される。

 前者はアドヴィックスの専売特許ともいえる方式で、1997年に量産が始まったトヨタの初代「プリウス」からその歴史が始まっている。ブレーキの油圧を内部にあるモーターで作り出してアキュムレーターにためておき、ブレーキペダルを踏んだ時にタイヤ側に油圧を伝え、ブレーキを作動させる。瞬時に大流量の油圧を供給できる特徴がある。

 一方のオンデマンド式は、内蔵するモーターでブレーキのマスターシリンダーを押し、油圧を制御する。アキュムレーターがない分、部品点数を減らせる。オンデマンド式ではドイツのBosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)、ZFが先行する。

 アドヴィックスは2020年、日経Automotiveの取材でオンデマンド式の電動油圧ブレーキを投入する意向を明かしていた。bZ4X向けの量産を機に、ドイツのメガサプライヤーと同じ土俵での真っ向勝負が始まる。

 オンデマンド式では後発となるアドヴィックスは、性能面でドイツ勢との差異化を図る。具体的には、前後輪のブレーキを独立制御できるようにした。前輪と後輪の油圧を最適に配分することで、燃費改善に貢献したり制動時の車両姿勢を安定化したりできるという。

 前後の油圧が可変だと、回生ブレーキと摩擦(油圧)ブレーキのバランスを走行条件に応じて細かく変更しやすい。エネルギー回生の効率を最大化するように摩擦ブレーキの割合を減らす。車両姿勢に関しては、前後輪が同圧の場合、前輪側の制動力が強くなりすぎて、ブレーキを踏むと車両が前のめりの姿勢になってしまうことがある。前輪と後輪を独立させることで、制動力を前後輪に最適配分できるという。