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 通信インフラを複数の事業者で共有する「インフラシェアリング」が広がりつつある。これまでは携帯電話各社が独自の通信インフラを構築し、エリアの広さを競い合う「設備競争」の側面が強かったが、5G(第5世代移動通信システム)時代に突入して状況が変わってきた。シェアリング専門の事業者も登場している。

 ただ政府が掲げる「Society 5.0」の実現に向けて5G/Beyond 5Gの早期整備を目指すのであれば、もう一段踏み込んだ取り組みが求められる。本特集ではインフラシェアリングの最新動向と今後の課題を見ていく。

総務省のガイドラインが転機に

 鉄塔やアンテナを複数の事業者で共有する動きはこれまでも海外で見られたが、日本で大きな転機となったのは、総務省が2018年12月に公表したガイドラインである。インフラシェアリングの活用で通信インフラの円滑な整備を推進する観点から、「移動通信分野におけるインフラシェアリングに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を策定した。ガイドライン公表から3年以上を経た今、インフラシェアリングの必要性はさらに高まっている。

 政府は「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く次の目指すべき社会として「Society 5.0」を提唱している。Society 5.0では、IoT(インターネット・オブ・シングズ)ですべての人とモノがネットワークでつながる。今後は様々な知識や情報を収集・分析し、これまでなかった新しい価値の創出をはじめ、少子高齢化や地方過疎化、貧富の格差といった社会課題の克服が期待される。日本に限らず海外でもウィズコロナやアフターコロナの社会においてはすべての人がネットワークにつながっていることが肝要とされ、国の重要施策として推進する動きが増えている。

 このようなあらゆる活動がデジタル前提の社会を実現するためには、超高速・大容量で超低遅延かつ安全な通信インフラとして5G/Beyond 5Gの普及が不可欠。それも都市部だけでなく地方部も含めた全国津々浦々への早期整備が望まれる。様々な社会課題を解決するためのアプリケーションの提供にはAI(人工知能)やビッグデータ分析などの機能も必要になり、これらを担うクラウドサーバーやMEC(マルチアクセス・エッジコンピューティング)といったプラットフォーム基盤の役割も今以上に重要性を増すと考えられる。

人口カバー率90%でもスカスカ

 では、足元の状況はどうだろうか。ソフトバンクは2022年4月、競合他社に先駆けて5Gの人口カバー率が3月末時点で90%を突破したと発表した。ただ同社が公表しているサービスエリアマップを見れば分かるが、人口カバー率90%といっても面積的にはスカスカである。

ソフトバンクのサービスエリアマップ(2022年4月末時点)。競合他社に先駆けて5Gの人口カバー率が90%を突破したが、面積的にはスカスカである
ソフトバンクのサービスエリアマップ(2022年4月末時点)。競合他社に先駆けて5Gの人口カバー率が90%を突破したが、面積的にはスカスカである
(出所:ソフトバンク)
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 しかも5Gエリアの多くは既存の4G周波数の転用で実現したものであり、この場合は通信速度が既存の4Gと同程度にとどまる。5G専用周波数(28ギガと3.7ギガヘルツ帯)を活用した超高速・大容量のエリア(濃いピンク色の部分)はごく一部に限られる。