全1095文字
PR

 耐熱性が高くて寸法安定性に優れ、射出成形で加工できるフェノール樹脂。モーター用ブラシホルダーや、冷却ポンプ部品、クラッチピストン、断熱ガスケットなど、自動車部品には欠かせない熱硬化性樹脂だ。石油から造っている現行のフェノールをバイオ化する開発を進めているのが、住友ベークライト注)である。

 同社はフェノールのバイオ化を2つの方向で進めている。1つは、バイオマス比率が100%の「グリーンフェノール」である。原料は非可食のバイオマス。供給の安定性に不安がなく、入手しやすい植物のセルロースを使用する。

グリーンフェノールの製造プロセス
グリーンフェノールの製造プロセス
非可食バイオマス原料を糖化し、微生物発酵法でバイオ変換してフェノールを造る。(住友ベークライトの資料を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 製造プロセスは、まず前処理の糖化工程でグルコースとキシロースの混合糖を造る。続いて、この混合糖をバイオ変換工程に送り、微生物を使った発酵によって「糖の分子構造をフェノールの骨格に変化させる」(住友ベークライト)。こうしてフェノール水溶液を得る。次に、濃縮・精製工程に進み、フェノール水溶液の濃度をフェノール樹脂を合成できる水準まで高めることで、フェノールを生産する仕組みだ。これを住友ベークライト注)から化学メーカーに提供し、化学メーカーがフェノール樹脂を造る。

注)実際には、バイオ変換技術を有する(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)とフェノール樹脂製造を行う住友ベークライトの合弁会社で、グリーンフェノールを製造するグリーンケミカルズを指す

 このプロセスの鍵は、バイオ変換工程にある。現在、コストを抑えた量産設備の確立に向けて開発を進めている。加えて、耐熱性や絶縁性、機械的強度などの特性を現行の石油由来のフェノール樹脂と同等にする必要もある。実用化までには、もう一段高いハードルを越える必要がありそうだ。