全2590文字

 セルロースで強化したプラスチック材料の技術開発を進める企業が、相次いで成果を出し始めた。ダイキョーニシカワは、直径(以下、繊維径)がナノ(nm)レベルのセルロースナノファイバー(CNF)によって強化したプラスチックでクルマのスポイラーを試作。古河電気工業は、繊維径がナノ(nm)レベルまで細かくないマイクロ(μm)レベルのセルロースファイバーを51%含むプラスチックの実用化にめどを付けた。住友化学は、繊維径がさらに大きめの木材繊維で強化したプラスチックを開発した。

 3社はいずれも、成形品を「人とくるまのテクノロジー展2022YOKOHAMA」(2022年5月25日~27日、パシフィコ横浜)に出展。それぞれアプローチが異なっており、製品に含まれるセルロースの繊維径の大きさが異なる点が特徴だ(図1)。

図1 異なる大きさのセルロースの繊維でプラスチックを強化
図1 異なる大きさのセルロースの繊維でプラスチックを強化
企業によりアプローチが異なる。寸法は大まかな目安。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

タルク強化PPより比強度は増加

 ダイキョーニシカワのスポイラー試作品は、CNFを30%含むポリプロピレン(PP)を使って射出成形で製作したもの(図2)。「ポリカーボネート(PC)やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)と同等の強度」(ダイキョーニシカワ)を持ち、既存のプラスチックに対してそん色がないという。タルク(滑石)強化PPと比べても比重当たりの曲げ弾性率が高く、少ない使用量で同程度の剛性を確保できる。そのため、軽量化に寄与するという(図3)。

図2 ダイキョーニシカワが射出成形で試作したスポイラー
図2 ダイキョーニシカワが射出成形で試作したスポイラー
左半分は塗装しているが、右半分は未塗装。CNFを30%含むPPの射出成形による。(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
図3 タルク強化PPとの曲げ弾性率の比較
図3 タルク強化PPとの曲げ弾性率の比較
剛性が高く、軽量化を図れる。(出所:ダイキョーニシカワの資料を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 CNFがプラスチックの中で凝集せずに分散するように、ダイキョーニシカワはCNFの変性やプラスチックとの調合から手掛けた。押し出し機でCNFとプラスチックを混錬する際のスクリューの形状や長さ、混錬条件、材料の投入位置などを調整した。

 射出成形の金型は、既存のプラスチック用金型をほぼそのまま利用できる。成形温度はCNFが焦げるのを避けるために低めに設定する必要があるが、「むしろ冷却時間が短くなるため、量産性は上がり、成形時のコストは低減する」(ダイキョーニシカワ)利点がある。課題はCNF自体のコスト。これを低減できれば製品化する上での問題はほぼなくなるという

* ダイキョーニシカワは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」プロジェクトに参画している。同プロジェクトは、CNFを含む複合プラスチックのペレット価格を2024年に1kg当たり700円程度、2030年末に同300~500円にする必要があるとしている。

 CNF強化プラスチックは、豊田合成もクルマのグラブボックスなどの成形品を出展。CNFとPPの配合と混錬の技術で実現した。