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 「バイオプラスチックに3度目の波が来た」――。こう話すのは、日本バイオプラスチック協会(JBPA)事務局長の横尾真介氏だ。バイオプラスチックブームは、過去に2回あったが、3回目の今回は「今までとは違う」(同氏)という。実際、同協会が交付するバイオプラスチックマークの登録件数が急増している(図1、2)。ここでいうバイオプラスチックとは、植物などの再生可能なバイオマス資源を原料としたバイオマスプラスチックと、微生物などの働きによって分解される生分解性プラスチックである。

図1 JBPAが交付するバイオプラスチック認定マーク
図1 JBPAが交付するバイオプラスチック認定マーク
左がバイオマスプラスチック、右が生分解性プラスチック。(出所:JBPA)
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図2 バイオプラスチック認定マークの登録件数の推移
図2 バイオプラスチック認定マークの登録件数の推移
(出所:JBPAの資料を基に日経クロステックが作成)
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 1回目のバイオプラスチックブームは1990年代。高度経済成長の中で、プラスチック製品の廃棄処理問題が浮上し、土の中の微生物の力で水と二酸化炭素(CO2)に分解する生分解性プラスチックが注目を集めた。日本と米国で合成・加工技術でしのぎを削ったが、その後は市場が伸びず、ブームは過ぎ去った。

 2回目は愛知万博が開催された2005年ごろ。愛知万博では、サブテーマの1つに「循環型社会」を掲げ、食器やゴミ袋、会場資材にバイオプラスチックを積極的に導入した。同じ頃、原油価格の高騰も重なり、脱石油社会への挑戦を象徴する博覧会として、日本の環境技術を世界へアピールした。2004年度末には、JBPAの生分解性プラスチックの登録件数は過去最高の750件に達した。

 しかし、2008年のリーマン・ショックで石油の需要が落ち込み、原油価格は急落(図3)。結局、バイオプラスチックの市場はまたも拡大せず、日本企業の多くがバイオプラスチック事業から撤退した。

図3 原油価格の推移
図3 原油価格の推移
(出所:財務省広報誌「ファイナンス」令和3年4月号)
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レジ袋有料化などで再び脚光

 それからおよそ10年後の2020年、容器包装リサイクル法改正に伴い、レジ袋の有料化が義務化され、バイオプラスチックが再び脚光を浴びた。一定の条件を満たすバイオプラスチックで出来たレジ袋は、有料化の対象にならないためだ*1図2に示したように、特に植物由来成分を含むバイオマスプラスチックの登録件数は、2018年の180件から2021年には793件と、4.4倍ほどに急増している。

*1 「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」(経済産業省、環境省)によれば、海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの、またはバイオマス素材の配合率が25%以上のもので、その旨が表示されているものは有料化の対象外となる。

 新たなバイオプラスチックブームは、日本国内にとどまらない。「今回のブームは、カーボンニュートラル宣言や海洋プラスチックごみ問題を背景とした世界的な流れだ。市場も予想を上回る速さで成長している」(横尾氏)という。

 欧州バイオプラスチック協会(EBPA)が2021年12月に公表した資料では、同年の世界のバイオプラスチック生産能力はおよそ242万tで、2020年に発表した予想の223万tを上回る(図4)。さらに、2022年以降の予想も、大幅に上方修正した。例えば、2025年の生産能力の予想は、2020年発表の287万tから2021年には672万tと、約2.3倍に増えている。

図4 世界のバイオプラスチック生産能力の予測
図4 世界のバイオプラスチック生産能力の予測
(出所:EBPAの資料を基に日経クロステックが作成)
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 今、欧州をはじめ、世界各国が石化由来プラスチックの削減に向けた政策を打ち出している。無論、日本においても、2019年に環境省らが策定した「プラスチック資源循環戦略」の中で、2030年までにバイオプラスチックを約200万t導入する目標を掲げた。このような中長期的な取り組みからも、新たなバイオプラスチックブームが、一過性の流行で終わらないものと推測できる。横尾氏が「今までとは違う」と言うのも納得だ。