ドイツSiemens(シーメンス)は2022年5月30日、製品の二酸化炭素(CO2)排出量に関わる情報を供給網(サプライチェーン)全体で共有する目的で14の企業などと協会を立ち上げると発表した。国際産業技術展示会「HANNOVER MESSE 2022」における報道機関向けの会見で明かした。同協会の会員が主体となり、CO2排出量の計算方法の標準化などに取り組む。
「11年前に提唱したインダストリー4.0が今、急速に実を結んでいる」――。Siemens取締役兼デジタルインダストリーズ最高経営責任者(CEO)のCedrik Neike(セドリック・ナイケ)氏は同日、こう語った。約10年間、目立った成果が出ていなかったが、気候変動、新型コロナウイルス、ウクライナ問題などに伴うサプライチェーンの寸断という3つの難題をきっかけに、デジタルツインに代表されるインダストリー4.0のコンセプトが次々と実現したとみる。
一方で、社会環境が大きく変わる中、インダストリー4.0の追求だけでは不十分だという考えも示した。重視するのは気候変動への対応だ。世界経済フォーラムによると、産業界のバリューチェーンは世界全体のCO2排出量の2割を占める。ただCO2削減は1社で取り組めるものではなく、「製品のCO2排出量の最大9割は、上流のサプライチェーン(供給網)であらかじめ決まってしまう」(ナイケ氏)のが現状だ。製品の脱炭素化にはサプライチェーン全体でCO2排出量に関わるデータを共有・把握し、それを減らしていく必要がある。
そこで、CO2など気候変動関連データをサプライチェーン全体で共有できる環境を構築する協会「Estainium」を立ち上げた。日本からはNTTデータが参加する。ナイケ氏は「ドイツだけ、欧州だけで完結する取り組みではいけない」と日本企業が参画する意義を強調した。他にはドイツの製薬大手のメルク、同国の大学など合計14の企業・団体が発足時の会員となる。