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 常連ともいえる大手工作機メーカーなど日本企業の出展が少なかった、世界最大級の産業技術の国際展示会「HANNOVER MESSE 2022」(2022年5月30日~6月2日、ドイツ・ハノーバー)。新型コロナウイルス感染症の拡大防止策による出入国の制約などが原因とみられるが、そんな中であえて「初出展」に挑んだ企業がある。工業用ファスナーや自動組立機、計測・検査装置などを取り扱う日東精工だ。同社が欧州市場に引っ提げてきたのは「ねじ」である。

図1 日東精工が展示したねじ締めロボット「SR565Yθ-Z」のデモ機
図1 日東精工が展示したねじ締めロボット「SR565Yθ-Z」のデモ機
ねじを空気で圧送する「かき上げ式」を採用。このデモ機は、ねじ先端部に付着した切粉などを除去する装置を搭載している。(出所:日経クロステック)
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 「欧州でねじ締めロボットの販売拡大を目指す」。同社グローバル戦略部兼産機事業部 海外販売部部長の小雲康弘氏はこう意気込む。

 展示していたのは、ねじ締めロボット「SR565Yθ-Z」のデモンストレーション機だ(図1)。SR565Yθ-Zは、ねじの供給に「かき上げ式」と呼ぶ空気による圧送方式を採用。ねじを締め付けるアームには、水平方向(Y軸)のスライドと鉛直方向を回転軸として旋回する独自の機構を採用。低騒音と省スペースなどを特徴とする同社の主力製品の1つだ。発売から10年以上たつが、ここ数年引き合いが増えてきたという。「コンタミネーション(異物混入、以下、コンタミ)対策が、自動車の電動化が進むにつれ注目を集めている」(小雲氏)

  ポイントはデモ機が搭載している、ねじ先端部に付着した切粉などを吸引・除去する装置だ(図2)。この除去装置を標準化したのが1年ほど前で、それに伴って引き合いが増えたという。

図2 切粉の除去などの仕組み
図2 切粉の除去などの仕組み
ねじを締め付けている間に、次に締めるねじをねじキャッチャーに圧送して付着物を吸引・除去。付着物を除去したねじを吸引したユニットが、締め付け箇所に移動してねじを受け渡す。(出所:日東精工)
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 「電動化によって自動車に搭載されるモーターやセンサーなど電子部品が増え、部品メーカーは従来以上のコンタミ対策を求められている」(小雲氏)

 電子部品の製造において、基板を固定するねじなどに付着した切粉が基板上に落下すると、短絡(ショート)の危険性が高まる。こうしたリスクを回避するため、コンタミによるトラブルに神経をとがらせる部品メーカーらが、ねじの付着物を除去する機能に注目しているという。

 付着物の除去装置は、ねじを締め付けるアームの近傍に設置。締め付けている間に、次のねじの付着物を除去してすぐに締め付けられるような機構にしているので、「付着物を除去する工程が1つ増えるが、サイクルタイムは変わらない」(小雲氏)。