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 インダストリー4.0(Industry 4.0)が世界最大級の産業技術展示会「HANNOVER MESSE」で提唱されて10年余り。インダストリー4.0が掲げた製造のスマート化は着実に進んでいるものの、まだ十分に実装されたとは言えない。ドイツのFraunhofer-Gesellschaft(フラウンホーファー研究機構)はさらなる製造のスマート化に向けた研究に力を注いでおり、成果を「HANNOVER MESSE 2022」(2022年5月30~6月2日、ドイツ・ハノーバー)で披露した。

ピンポン玉で5Gの低遅延をアピール

 フラウンホーファーの展示エリア内では、数ある研究チームがそれぞれ小さなブースを出した。その1つがフラウンホーファーIPT(Institute for Production Technology:生産技術研究所)などで構成するエッジクラウドを開発する研究チーム。今回は5G(第5世代移動通信システム)のリアルタイム性をアピールする一風変わった展示を行った。

 展示物は4つのアクチュエーターに支えられた透明なプレート上でピンポン玉が跳ね続けるというもの。ピンポン玉はプレート上のランダムな場所に落下するが、プレートの外には落下しないよう制御されている。

ピンポン球が跳ね続けるデモンストーレーション
4つのアクチュエーターのうち、2つを5G経由で、残る2つを有線で制御用のエッジクラウドと接続している。(動画:日経クロステック)
* 工場などの現場で大量のIoT(Internet of Things)データを処理・分析するためのコンピューター。

 ピンポン玉が落下しないからくりは次のようなものだ。まず、プレートの下に付いたカメラがピンポン球の位置を捉えると共に、ピンポン球の直径から高さを推測する。これらの情報はフラウンホーファーが開発したエッジクラウドに送られる。エッジクラウドでは、ピンポン球がプレートの真ん中に戻ってくるプレートの角度を計算し、その角度でピンポン球をはじき返すよう4本のアクチュエーターに制御信号を返している。

 注目すべきはアクチュエーターとエッジクラウド間の通信手法だ。4つのアクチュエーターの内2つは有線でエッジクラウドとつながっており、残りの2つはミリ波帯の5Gによる無線通信で接続している。

 つまり、ピンポン球をプレート内に収める制御に成功しているということは、有線の通信と5Gによる無線通信の通信速度にほとんど差がないと分かる展示になっている。フラウンホーファーの担当者は「実際の産業用途でも有線の通信と無線通信を組み合わせられるだろう」と話す。