FA機器メーカーのドイツFesto(フエスト)が「世界初」(同社)の空気圧で動く協働ロボットを開発した。制御システムなどを含めた質量は一般的な協業ロボットの約半分の17kgと軽く、人にぶつかった場合も衝撃が小さく安全だという。2023年をめどに発売する。開発中のロボットを世界最大級の産業技術の国際展示会「Hannover Messe 2022」(2022年5月30~6月2日、ドイツ・ハノーバー)で公開した。
開発した協働ロボットは、6軸のロボットアームと制御システム、プログラミングの知識がなくてもティーチングできるソフトウエア「Robotic Suite」から成る。一般的には電動モーターを使うロボットアームの関節部に、空気圧式のダイレクトドライブを採用しているのが特徴だ。
空気圧駆動を実現する肝は、「ピエゾバルブ(piezo valves)」と呼ぶ圧電素子で造った弁にある。空気の流量を調整する役割を果たす。ピエゾバルブは電圧を印加していないときは閉じており、空気を通さない。電圧をかけると圧電素子が収縮して弁が開き、空気が流れる。印加電圧が高いほど圧電素子の収縮が大きくなるため、空気の流量も多くなる。
空気の流量の調整で関節部の回転方向や速度を柔軟に制御できるため、ロボットアームが人間のように滑らかに動く。Festoの担当者は「電気的な制御だと通常はオンとオフの2値しかないが、ピエゾバルブによって連続的な制御が可能になった」と話す。
同社は医療など他の領域で既にピエゾバルブを販売しており、これまで培ってきたノウハウを協働ロボットに転用した。「ピエゾバルブを協働ロボットに応用するアイデアは2017年ごろからあり、2019年に本格的な開発を始めた」(同社担当者)という。