急に開催が決まったWeb会議のIDとパスワードを参加者に伝えなければならない――どんな手段で伝えるのがよいのだろう。ビジネスでの連絡手段といえば、少し前まではメールか電話のどちらかだった。電話のように相手を物理的に拘束したくないときや、URLや細かい数値など口頭で内容を伝えにくいときはメールを使った。緊急性が高く相手に伝達内容をいち早く認識してもらうときは電話を使い、電話とメールを併用するケースもあった。
最近では連絡手段として、メールと電話のほかに、ビジネスチャットやSNSなどのメッセージ機能、SMS(ショートメッセージサービス)も使われるようになった。連絡手段が増えたことは好ましいが、逆にどれを使ったらよいか悩むことはないだろうか。社内の日常連絡をする場合を例に、その使い分けの方法について紹介する。
セキュリティーに携わる人が主に使う連絡手段
筆者がセキュリティー業務に携わる中で知り合った、仕事でセキュリティーに携わる人(セキュリティーベンダーや研究者、情報システム部門の方など)約100人に、「社内の日常連絡(Web会議のIDとパスワード、作業完了報告、翌日の集合場所の連絡など)で主にどの手段を使いますか?」(選択肢から複数回答)と尋ねたときの回答を集計し、次のグラフで示した。
その結果、8割近くの人がメールとビジネスチャットを使い、SNSのメッセージ機能やSMS、電話を使う人は1割以下であることが分かった。メールとビジネスチャットはどちらも高い比率であることから、連絡内容や相手によって使い分けているとみられる。
メールとビジネスチャットの使い分け
まずはメールを見ていこう。前述したメールと電話の比較で紹介したように、メールは相手を拘束することなく、細かい数値などを含む伝達内容を間違いなく相手に伝えるときに役立つ。加えて、相手の都合を気にせずに送信できる点もメリットだ。さらに、ファイルを送ったり、複数の人に一斉通知できたりする点も便利だ。
ここに挙げた、電話と比較したときのメールのメリットは、そのままビジネスチャットのメリットともいえる。ビジネスチャットとは、米Microsoft(マイクロソフト)の「Teams」やSlack Technologiesの「Slack」などを指す。企業単位で導入していることもあり、社内での伝達手段として使いやすい。
また、メールより短い言葉でやりとりしやすいので、コミュニケーションを活性化するメリットもある。逆に、長い文章を送ったり、かしこまったあいさつをしたりするようなときは向かない。きちんとした文章を書いても、フランクな印象になりやすい。
メールと比較したときのビジネスチャットのメリットは、一部のツールを除いて、相手にメッセージが届いたか、そのメッセージを開いたかがリアルタイムで分かる点だ。メールの場合、メールが相手のメールボックスに届いたか、メールを開いたかが分かりにくい。メールには開封通知という仕組みもあるが、利用者は少ない。ビジネスチャットならメッセージを送った後、メッセージが届いていてもなかなか既読にならなければ、電話でフォローするといった使い方ができる。
ビジネスチャットにはメールにはない、もう1つ大きなメリットがある。ツールにもよるが、1度送ったメッセージを削除したり、修正したりできる点だ。メールでは宛先間違いの誤送信がよく問題になるが、ビジネスチャットでは相手が開くまでの間にメッセージを削除すれば、原則、情報が流出しない。送ったメッセージの内容に間違いが見つかったとき、それを修正できるのもありがたい。