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 「円安の影響でクラウドの利用料金が増大している。対策を検討中だ」。Amazon Web Services(AWS)のユーザーで、母親向け情報サービス「ママリ」を運営するコネヒトの永井勝一郎テクノロジー推進部部長は、2022年3月からの急激な円安によるクラウドコストの増大について不安を語る。

 2022年6月1日の為替レートは1ドル129.4円(東京外為市場のスポットレート、17時時点)。同年3月1日の1ドル115.04円(同)に対して、12.5%円安に振れた計算だ。2021年6月1日のレート、1ドル109.45円(同)と比べると、18.2%の円安である。

 円安はユーザーのクラウド利用コストに直接影響を及ぼす。AWSをはじめとして、海外のクラウドサービスでは日本のユーザーであっても、日本拠点(リージョン)のサービスだけを使おうとも、ドル払い(ドルによる単価料金を設定し直近の為替レートで円での支払いを受け付けるケースも含むものとする)になるケースが少なくないためだ。そのため為替レートが1割、2割と円安に振れると、支払額も同じだけ増えることになる。

ドル円レートの推移。2021年6月からの1年で18%の円安に
ドル円レートの推移。2021年6月からの1年で18%の円安に
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2016年以降は円高基調だったが円安に急転

 日本企業においてクラウド利用が本格的な普及期に入ったのは2017年ごろといえる。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がAWSへの移行を表明した「三菱ショック」が契機になった。それ以降、クラウドのユーザー数が増えただけでなく、ユーザーごとにオンプレミス(自社所有)環境のシステムをクラウドに移行したり、新システムをクラウド上に構築したりしてクラウドの利用範囲が広がってきた。クラウドはDX(デジタル変革)の基盤としても重要な存在で、多くの企業で利用するクラウドのサービス数と量が年々増加してきている。

 それでも、これまではクラウドコストの増大が深刻な問題になりにくかった。要因は2つある。1つはクラウドベンダーが継続的に単価を値下げしてきたからだ。独自プロセッサーの開発をはじめとする技術革新や世界レベルの市場拡大などによって、クラウドベンダーはPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)やIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)のサービス単価を一部の例外を除いて一貫して引き下げてきた。例えばAWSが2006年のサービス開始以来、2022年4月までに発表した値下げは延べ115回に上るという。

 もう1つの要因は、緩やかな円高基調が続いてきたことである。円高によって値下げ効果が生じたわけだ。

 こうした値下げ要因を背景に、国内ユーザーの間では基本的に1社のメガクラウドだけを使うというスタイルが主流となっている。複数のクラウドを使うと自社エンジニアの学習コストが高くつくとの理由はあるが、相見積もりを取ったり価格交渉をしたりしてぎりぎりまでコスト削減を図る他のITリソースとは別の扱いだ。

 しかし急速に円安が進んだことで、潮目が変わる可能性がある。JCBの片岡亮介システム本部デジタルソリューション開発部部長は「世界的な原油高や半導体不足などの諸要因により、ITリソースの調達コストが全般的に上がっていると認識している。今回円安に大きく振れたことで、ドル払いのクラウドのコストが直接的に上がった。今後、コスト削減の努力が一層求められると考えている」と話す。