電力料金の高騰がデータセンターの運営を直撃している。影響は施設内のラックを貸し出すハウジングで大きく、値上げが不可避な情勢だ。サーバーや一部設備も値上げ傾向にあり、付加価値型サービスにも影響が及ぶ恐れがある。
2022年夏は日本のITベンダーが提供するデータセンター(DC)関連サービスで標準料金の値上げや、ユーザー企業との価格交渉が始まる公算が大きい。記録的な電力の高騰が運営コストを押し上げ、ベンダーが吸収できる限界を超えつつあるからだ。
例えばNTTデータがDCの運営で支払う2022年5~6月の電力単価(キロワット時当たりの料金)は、1年前から6割を超えて値上がりしたという。同社で関連サービスを統括する西村俊次データセンタ&クラウドサービス事業部マネージドサービス統括部マネージドサービス担当部長は「幾つかのDC関連サービスで料金改定の交渉を検討している」と話す。
インターネットイニシアティブ(IIJ)も「検討はこれからだが、いつまでも顧客企業に価格転嫁しないのは難しいと思う」(久保力基盤エンジニアリング本部基盤サービス部長)という。
他の国内ITベンダー大手では、富士通やSCSK、TISが「検討を進めているが、方針は決まっていない」とする。ただし各社とも電力料金の高騰がDCの運営コストを押し上げている状況は同じだといい、危機感を強めている。
既にITベンダー間の取引では電力コストを転嫁する交渉が始まっている。自社DCだけでなく他ベンダーの施設も多く借りているIIJは「値上げ交渉を求める通知がDCの調達先企業から来ている」(久保部長)。値上げでの契約改定となれば、顧客企業への転嫁を検討せざるを得ないという。
既に25%のコスト増、さらに上昇へ
DCを多拠点で運営するITベンダーにとって、原油高騰を原因とした今回の電力料金の値上げは、一般的な家庭や事業所より影響が大きい。各社はDCで大電力を消費する大口需要家として標準料金よりも割安な電力単価を引き出している。しかし、原油価格に連動して加算・減算される燃料費調整には割引がなく一律に適用される。
具体的には、ベンダー各社はDC向けに電力会社と特別高圧電力の契約を結び、東京電力の管内では割引率の違いによりキロワット時当たり10円強~20円程度の範囲で契約できていたもようだ。これに対し2022年5月の燃料費調整は2021年3月から同7円台の増加となり、値上げ幅は3~6割超に達する。東京電力の標準的な料金の試算モデルに基づく2割強より値上げ幅はきつい。2022年7~8月は燃料費調整がさらに高騰し、標準モデルでも値上げが3割強に達するのが確定的だ。
DC運営コストに占める電力料金は、各社の話を総合すると標準的な施設で3~4割を占める。つまり電力料金高騰は、2022年5月ごろの時点でコストを10~25%程度押し上げている。