[注目キーワード1]NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)
移動体通信のインフラに変革の波が訪れている。それを象徴するキーワードが「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)」だ。NTNは、通信衛星やドローンなどの無人飛行体を活用して構築する通信網のこと(図1)。電波の拡散する特性から、飛行体の高度が上がるほど通信範囲は広くなる。
携帯各社の中で、NTNの取り組みに最も積極的なのがソフトバンクだ。2021年6月に同社が発表した戦略によれば、NTNに関する3つの計画があるという(図2)。
1つめは、高度20kmに無人航空機型の基地局(HAPS:成層圏通信プラットフォーム)を周回させて4Gや5Gの移動体通信を提供するサービス。通常のスマートフォンなどで利用可能な点が特徴だ。下りの通信速度は約280Mbps、通信範囲は半径100kmで、山間部やへき地など地上系ネットワークが整備されていない地域での利用を見込む。商用サービスの開始は2027年を予定する。
2つめは、高度1200kmの低軌道衛星(LEO)システムだ。米国の衛星通信サービス会社であるOneWeb(ワンウェブ)の衛星を利用する。通信速度は下り約200MbpsとLTE並みだが、専用端末が必要になる。用途としては、船舶向けの通信や基幹回線網につなぐ中継回線などやや特殊な用途を想定する。2022年中にサービス開始を目指す。
3つめは、高度3万6000kmの軌道を周回する静止衛星(GEO)の通信システム。ソフトバンクは米スカイロテクノロジーズの静止衛星通信サービスと提携する。通信速度は20kbpsと低速だが、最大の売りは月額500円以下という料金の安さ。IoTを活用した貨物輸送の追跡・管理といった産業用途を想定する。
NTNは自動車メーカーも注目する。例えば、独BMWは一部の自動車に、車両の衝突やエアバッグが展開する事故が発生すると同社のコールセンターに知らせる機能を用意(図3)。同社はNTNが普及することで事故現場が通信困難な場所でも確実につながる仕組みを目指す。