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経済産業省、東京証券取引所、情報処理推進機構(IPA) が2022年6月に発表した「DX銘柄2022」。その選定企業は日本における DX(デジタルトランスフォーメーション) の先進企業と位置づけられ、大半がDXの取り組みを全社に広げている。DXの全社展開では全社ビジョンを浸透させたうえで、業務の現場を組織的に支援することが不可欠だ。DX銘柄2022の選定企業はDXの全社展開において、どのような組織的支援をしているのか。特徴的な事例を取り上げる。今回はDX銘柄2022に選定されたふくおかフィナンシャルグループ(FG)の取り組みについて、傘下のみんなの銀行のケースを中心に紹介する。

 みんなの銀行は2021年5月にサービスを開始したデジタル専業銀行で、メインの顧客ターゲットはデジタルネーティブ世代だ。スマートフォンの専用アプリによって口座振り込みやローン申請などの取引サービスを提供している。システムの頻繁な改変が可能なマイクロサービスアーキテクチャーを銀行システムに採用しており、「ユーザーの声を基に年間で30回ほどアプリをアップデートしている」と永吉健一頭取は話す。

 「規制緩和によって他業種から銀行業に参入しやすくなった。DXに取り組んでいない銀行は10年後には淘汰されてしまう」。永吉頭取は同行の立ち上げに込めた思いをこう語る。

 システムの柔軟性を生かして外部サービスと提携するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の取り組みをすでに始めている。その1つが2021年9月にピクシブ(東京・渋谷)と開始した「パートナー支店」だ。ピクシブはイラスト・漫画・小説といった作品の投稿サイトなどのサービスを運営している。ユーザーがみんなの銀行のアプリを通じてピクシブのサービス上に銀行口座を開設すると、入出金などの取引ができる。口座を開設することで、みんなの銀行アプリ上でバーチャルデビットカードが発行され、ピクシブのサービス以外の用途にも利用できる仕組みだ。

 みんなの銀行が現在力を入れているのは、自行の口座データを外部のアプリケーションから書き換える更新系API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を使った新規事業の開拓である。更新系APIは2023年3月までに提供したい考えだ。

横断型の「ユニット」でプロジェクトを推進

 柔軟なシステムを武器に新しいサービスの提供にまい進するみんなの銀行は、どのようにサービス開発のプロジェクトを進めているのか。同行におけるプロジェクトを進める組織は「ユニット」というチームだ。ユニットごとにリーダーのほか、ユーザーインターフェースなどのデザインやシステム開発の担当者、業務知識を持つビジネス担当者などが所属する。サービスごとに「預金ユニット」「為替ユニット」などのチームをつくってプロジェクトを推進する。

 ユーザーからの要望やユニットが発案した改善案などは、ユニットごとにチケットとして管理している。一方で大規模なシステム開発プロジェクトに取り組む場合など既存ユニットの業務に該当しないプロジェクトが発生すると、その都度新しいユニットを立ち上げて対応する。「プロジェクトの数は流動的に変化するが、7~8個ほどのプロジェクトを並行して進めている」(永吉頭取)。

みんなの銀行が取り組むユニットのイメージ。開発するサービスごとにユニットを構築している
みんなの銀行が取り組むユニットのイメージ。開発するサービスごとにユニットを構築している
(出所:みんなの銀行)
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 プロジェクトの進行を組織的に支援する場として、各ユニットのリーダーが参加する「ユニット横断会議」を週次で開催している。それぞれのリーダーが、所属するユニットが抱えるプロジェクトの進行状況や課題などを共有する。会議には永吉頭取など経営層も出席し、プロジェクトごとに案件の優先順位やコストを調整している。