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 ENEOSホールディングスは2040年までのグループ長期ビジョンを掲げ、2つの軸でDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。1つが2025年までに既存事業の最適化を目指す「ENEOS-DX Core(DXコア)」で、もう1つが2030年までに新規のビジネスや顧客基盤の創出を目指す「ENEOS-DX Next(DXネクスト)」だ。

 ENEOSホールディングスと傘下のエネルギー事業を担うENEOSとの合同部門であるIT戦略部の田中祐一部長は、DXコアとDXネクストは連動した取り組みだと話す。「DXコアで収益を向上したりコストを削減したりしてリソースを捻出し、DXネクストの取り組みにシフトさせる」(田中部長)。いわば、DXコアとDXネクストを両輪としてENEOSグループのDXをドライブさせるわけだ。

ENEOSグループが取り組むDXの概要。「ENEOS-DX Core」と「ENEOS-DX Next」の両輪でDXを推進する
ENEOSグループが取り組むDXの概要。「ENEOS-DX Core」と「ENEOS-DX Next」の両輪でDXを推進する
(出所:ENEOS)
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 ENEOSグループを取り巻く外部環境に目を向けると、低炭素に対する社会的なニーズの高まりや人口減少による国内石油需要の減退が見通される。同社にとって、製油所を含む石化プラントの生産効率向上は重要な経営課題の1つだ。

プラントをAIで自動運転

 生産効率を向上する取り組みの1つが、Preferred Networksと共同で開発した石化プラントの自動運転AI(人工知能)システムだ。2019年6月からENEOSホールディングス(当時はJXTGホールディングス)はPreferred Networksと協業し、過去の運転データやシミュレーターで生成したデータを基に、プラント内部の温度や圧力など複数のセンサー値とバルブ操作の相関関係を学習させてAIシステムを構築。川崎市にあるENEOS川崎製油所石化プラント内のブタジエン抽出装置を2日間にわたり自動運転したと2021年12月に発表した。AIシステムでプラントを自動運転する取り組みは国内初だったという。

 自動運転AIシステムを開発した背景には、熟練技術者の高齢化による人手不足の懸念があるという。従来プラントを運転する際は、運転員が24時間体制でプラントを監視したり操作したりする必要があった。精製する商品を切り替える際にはプラントの運転条件を変更する必要があり、バルブ操作などのプラント運転スキルは熟練者のスキルに依存していた。

 プラント自動運転AIシステムの開発は、プラント運転の担当部門のニーズを基に始めた。AIシステムを開発する前から、プラント内の温度や圧力をトリガーにしたフィードバック制御によってプラントを半自動で運転する仕組みはあったという。だがこの技術は「同じ製品を同じ量だけ製造し続けるなら問題なく自動運転できるが、当社の製品は種類が多く製造条件を毎日変更する必要がある」(田中部長)ため不十分だった。