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 AGCは2021年に策定した新中期経営計画「AGC plus-2023」でDX(デジタルトランスフォーメーション)を経営戦略の柱の1つと位置付け、全社で推進している。池谷卓経営企画本部DX推進部長は、同社がDXで目指す姿を「調達や製造、在庫・物流、販売をサプライチェーンとして、経理や人事などのバックオフィスを別のチェーンとしてつなぐなど複数のビジネスプロセスを(デジタル技術によって)つないでマネジメントし、顧客や社会に価値を提供することだ」と話す。

 AGCは現在、サプライチェーン、バックオフィスのチェーンと並ぶ3つめのチェーンの構築に力を入れている。それはマーケティングや研究開発、設計、生産技術などものづくりの上流工程のプロセスをつなぐものだ。一般に「エンジニアリングチェーン」と呼ばれる。

 池谷部長はその狙いを次のように話す。「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を使えば、例えば材料Aと材料Bを混ぜると良い性質を持った新素材が出来る、ということは分かる。だがその新素材が生産性やコスト、顧客の反応まで含めて良いかどうかはMIだけでは分からない。社会的な価値の高い新製品を生み出すには(顧客と接点を持つ)マーケティングや生産などのリンクが必要だ」。

シミュレーションから試作品開発までを1日で

 成果は既に表れている。その1つが欧州の子会社が手掛ける、建築用ガラスの試作品開発にかかる時間を短縮する「Coating on Demand」と呼ぶサービスだ。従来は建築用ガラスの開発、生産において仕様を決めて試作品をつくるまでに数カ月ほどかかっていたが、顧客が好きな色や性質のガラスを選んでからAGCが試作品を開発するまでの工程を1日で完結できるようになった。「開発、製造、マーケティングまで含めてつながったチェーンの好例だ」と池谷部長は胸を張る。

 Coating on Demandの具体的な流れは以下の通りだ。まず建築デザイナーなどの顧客がガラスの色と性能を選び、選んだガラスの性質を基にAGCが遮熱性能やビルの外観をシミュレーションしてガラスの仕様を決定する。仕様が決まったらシミュレーション結果のデータを生産設備に連動させて製造が始まり、その日のうちに試作品が完成する。ビル周辺の建物や天候を変化させ、晴れの日のビルの外観や、ガラスに映り込む景色なども詳細にシミュレーションでき、顧客がイメージを描く手助けをする。

研究開発や設計、生産技術がチェーンでつながって実現した「Coating on Demand」のイメージ
研究開発や設計、生産技術がチェーンでつながって実現した「Coating on Demand」のイメージ
(出所:AGC)
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