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 省エネ基準適合義務化や4号特例縮小といった法改正の影響を建築実務者に尋ねた、日経クロステックと日経アーキテクチュアの独自アンケート。今回は、建築確認の際に省略されている構造審査の範囲を見直す「4号特例縮小」について掘り下げる。

 4号特例縮小については、今回の建築基準法改正で、小規模な木造2階建ての戸建て住宅でも建築確認時の構造審査が必須になる。4号特例縮小が施行された場合、仕事に影響を与えるかを尋ねた。

 集計の結果、大きな影響があるが41.0%、多少は影響があるが32.7%で、7割を超す回答者が何らかの影響があると答えた。ほとんど影響はないは23.2%にとどまった。

改正建築基準法の4号特例縮小について、仕事への影響を尋ねた。何らかの影響があると考える回答者が7割を超えた(資料:アンケート調査を基に日経アーキテクチュアが作成)
改正建築基準法の4号特例縮小について、仕事への影響を尋ねた。何らかの影響があると考える回答者が7割を超えた(資料:アンケート調査を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 仕事への影響が大きいと考えられる4号特例縮小。アンケートでは、賛成か反対かを尋ねたところ、意外にも賛成派が6割を占めた。

改正建築基準法の4号特例縮小について、賛否を尋ねた。賛成派が6割を超えており、仕事への影響はあるが縮小すべきと考える回答者が多いことが分かった(資料:アンケート調査を基に日経アーキテクチュアが作成)
改正建築基準法の4号特例縮小について、賛否を尋ねた。賛成派が6割を超えており、仕事への影響はあるが縮小すべきと考える回答者が多いことが分かった(資料:アンケート調査を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 賛成の理由について、自由意見で記入してもらった。興味深かったのは、特例による審査省略をいいことに、構造計算を手抜きしている設計者が存在しており、こうした設計者が審査の実施で淘汰されることを期待する声が複数あったことだ。

 「既得権益で仕事をしてきた設計者の淘汰がようやく始まる。本来やるべき業務に対応していない設計者は、仕事ができなくなる」(60歳以上男性、設計事務所)や「今までがおかしかった。『審査がない=やらなくてよい』と考えている設計者が多すぎる」(50代男性、設計事務所)、「構造安全性の確保は建築士にとって当然の義務。だが、4号特例をいいことに、その義務を果たさない建築士が多いのが事実だ。4号建築物は壁量計算不要と考えている建築士もいる。 建て主のために4号特例の縮小には賛成する」(50代男性、設計事務所)などだ。

 また、構造審査によって、能力のある設計者が正当に評価されることを歓迎する声もあった。「ちゃんと構造設計をしている設計事務所や工務店が評価される」(50代男性、官公庁など)や「構造に目が向くようになり望ましい」(60歳以上男性、住宅メーカー・工務店)、「吹き抜けの多用など構造に配慮せず意匠を考える弊害を少なくするために必要だ」(60歳以上男性、官公庁など)など。

 そもそも、4号特例の制度が時代に合わなくなったとの意見もある。「4号特例は、特例を出してでも住宅を建てなければならない時代の考え方で、既に時代遅れになっている」(30代男性、その他)や「4号特例の役割は終わっている。見直すのが妥当だ」(50代男性、住宅メーカー・工務店)」などである。

 この他、「消費者保護の観点で見直すべきだ」(40代男性、その他)や「人はミスをするもの。チェック体制があるべきだ」(40代男性、設計事務所)といった意見もあった。