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「どんどんチャレンジ」、ビックカメラは面白いフェーズに
野原 昌崇氏 ビックカメラ デジタル戦略部長
(撮影:村田 和聡)
(撮影:村田 和聡)
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 ビックカメラはこれから情報システムを内製する戦略に大きく舵(かじ)を切る。ここ数年、多くの事業会社が内製に乗り出す動きが活発化しているのは周知の事実だ。これは当然の流れであり、今取り組まなければ当社も厳しくなるのは目に見えている。

 今後、様々なシステムを内製していくために、まずはAWSとSalesforceを全面的に採用し、クラウドをベースとしたIT環境を整える。SalesforceはCRM(顧客関係管理)の「Service Cloud」の印象が強いが、ローコード開発ができる「Lightning Platform」は柔軟な設計が可能で、業務システムを内製する上でかなり有用なツールだ。私は前職で、Lightning Platformをベースに顧客情報に関わる多くの業務システムの内製に携わってきた。

 以前から付き合いのあるITベンダーが今後も大切なパートナーであることに変わりはないが、これからは自分たちで開発のイニシアチブ(主導権)を持ち、ベンダー依存をやめる。自分たちできちんとリスクをとるため、AWSジャパンなどとの契約も、(ITベンダーを経由せず)すべて当社との直接契約に切り替えていく。

内製で俊敏さを高める

 なぜ当社が内製化に向かうかというと、1つは当然コスト面だ。一般に、年収1000万円のエンジニアにITベンダー経由で働いてもらうと、人月単価は300万円に及ぶ。年間で換算すれば3600万円の費用がかかるということだ。これを直接雇用にすれば、福利厚生や稼働率を考慮しても単純計算で2000万円以上の費用を抑制できる。

 ただ当然コスト一辺倒の話ではなく、最大の目的は事業のアジリティー(俊敏性)を上げること。今後は顧客接点を担い変化の激しいSoE(System of Engagement)領域のシステム開発を中心に、内製に切り替えていく方針だ。SoEはとにかく早くリリースし、顧客の反応をみて改善を繰り返した方が圧倒的に良いシステムに仕上がる。これは開発をITベンダーに依存していてはできない。

 逆に変化が少ないSoR(System of Record)領域のシステムは、ITベンダーを頼るなどしたほうがいい。何でもかんでも内製するわけではなく、売り上げや顧客体験、従業員の生産性の向上につながるシステムなど、きちんと内製すべき領域を見極め、集中的に人材を投入する。

 今夏にはITエンジニア採用のための新会社を立ち上げる。採用した全員がきちんと稼働できるように、初年度は50人ほどの採用にとどめる。その後は継続的に採用を続け、遅くとも5年以内に200人を新規に採る計画だ。そしてアプリ開発チームやSalesforceチーム、デジタルマーケティングチームなど、内製部隊を拡充していく。

 幸いなことに、以前からいるシステム部門のプロパー社員は優秀な人材が多い。今後は内製化に向けてリスキリングを図りつつ、活躍できるフィールドを用意したい。プロアクティブ(主体的)に活躍できる社員については、本人が希望すれば新会社に転籍してもらうつもりだ。

 ただ、社長の木村が繰り返し言っているように、小売業の本質は商品と店舗にいかに魅力があるかだ。何もない企業をデジタルで磨くことはできない。デジタルはあくまでも手段であり、店舗や従業員、商品が主役なのは言うまでもない。

 これからビックカメラはOMO戦略やSPA(製造小売り)化、新規事業立ち上げなど、どんどんチャレンジしていく面白いフェーズに入る。社内の協力を得られやすい風土があり、ITエンジニアが活躍できる場も多いはずだ。(談)