全2939文字
PR

 「聖域なき事業改革」――。ビックカメラが木村一義社長のもと、大胆な改革に乗り出している。SPA(製造小売り)化、事業領域の拡大、スタートアップとの提携、総額100億円規模のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の設立……。多岐にわたる改革の中でも現在とりわけ重視するのが、デジタル変革だ。2022年1月に経営企画直下に既存のシステム部門を統合した「デジタル戦略部」を発足し、外部からITのプロ人材を続々と招いている。2022年6月13日にはアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)、セールスフォース・ジャパンとの提携を発表したほか、今夏にはITエンジニア雇用のための新会社を立ち上げ、本格的な内製化に乗り出す。木村社長が描く「ビックDX」に迫る。

ビックカメラが内製で挑む、家電量販DX(2)より続く

 「デジタルでお前らに何ができるんだ?」「DX推進部って楽しそうでいいよね。私たち営業は必死に外を歩き回って金を稼いできているのに」――。

 事業会社でデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の舵(かじ)取り任された組織は、意外にもこのような扱いを受けるケースが多い。本来、DXは会社全体の変革であって一部署が単独で実現できる話ではない。他部署を巻き込み、協力体制で取り組むのはDXの「必須」条件といえる。

ビックカメラは情報システムの内製に舵を切り、デジタル変革に力を注ぐ
ビックカメラは情報システムの内製に舵を切り、デジタル変革に力を注ぐ
(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 ビックカメラは2022年6月13日、「DX宣言」をぶち上げた。今後社内のIT環境を抜本的に改革し、情報システムの内製化を進めてデジタル変革を狙う。この変革をリードする同社デジタル戦略部は、いかにして他部署を巻き込みDXを成し遂げようとしているのだろうか。

信用の自転車操業、「クイックウィン」が鍵に

 「デジタル部隊は『信用の自転車操業』。Quick Win(クイックウィン、早期の成功)が必要で、小さくてもいいのでとにかくすぐに成果を出す。そして少し信頼してもらい、またちょっとした成果を出してもう少し信頼を得る。この繰り返しで徐々に社内の信頼を獲得していくことが重要だと思う」。ビックカメラDX戦略の舵取りを担う、野原昌崇デジタル戦略部長はこう話す。「いつまでたっても成果がないと、私のような外から来た(木村社長に採用され、中途入社した)人間はすぐにクビになる」と笑う。