SPA(製造小売り)化、事業領域の拡大、総額100億円規模のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の設立と、ビックカメラの改革を率いる木村一義社長。とりわけ重視するのが、デジタル変革だ。ベンダー丸投げの体質を改めシステム開発の内製化を推進。他社と同じ土俵に立たず、徹底した差異化を念頭に小売業のビジネスモデル変革を目指す。デジタルを舞台に展開する、木村流・勝利の方程式とは。
(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、鈴木 慶太=日経クロステック/日経コンピュータ)
子会社コジマの経営を立て直したあと、2020年9月にビックカメラ社長に就任しました。これまでの経営状況を振り返っていかがですか。
社長就任後は新型コロナウイルスの影響で非常に厳しい時期を過ごしてきました。同じ家電量販店でも都心型のビックカメラと郊外型のコジマの間で、この2年間はずいぶんと業績の明暗が分かれています。
新型コロナによって都心部の人流は激減し、これまでビックカメラの強みであった駅前立地という武器が、逆のアゲンスト(向かい風)になりました。そしてもう1つはインバウンド(訪日外国人客)。2019年までは都心部でインバウンドの恩恵を受けており、売り上げの4割をインバウンドで稼ぐ店もありましたが、これが全て蒸発しました。経営としては非常に痛手となりました。
家電量販業界の追い風だった巣ごもり消費も、都心部には人が来ず、フォローの風は全て郊外が受けました。ですのでグループの中でも郊外型のコジマはこの2年間ぐらいは絶好調なわけです。連結で見たときには、コジマがはるかに高い利益を上げて、支えてくれているような格好になっているというのが現状です。
これからの家電市場をどうみますか。
今の家電市場は約7兆円台とされ、ほとんど10年近く変わっていません。今後人口が減ることを考えれば、市場のパイが大きく広がることはない。そう厳しくみています。
ですので、会社として成長するには事業領域の拡大が必須になります。小売りとシナジーを見込める領域を中心に、事業領域を広げています。総額100億円規模のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を立ち上げたのも、魅力的なスタートアップがあれば出資し、ともにビジネスや製品を生み出すことが狙いです。
もう1つ力を注いでいるのがSPA(製造小売り)です。我々もものづくりに打って出ていかないといけない。小売りの勝ち組とされるユニクロやニトリに共通しているのは、製造小売りであること。NB(ナショナルブランド)を仕入れて売っているだけの小売りは、必ず厳しくなる。時間はかかるでしょうが、当社も外部から人をどんどん集めて、PB(プライベートブランド)商品の強化を進めています。
こういった改革と並行し、それらを支えるIT・デジタル領域を一気に強化していく計画です。