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 「真夏の日差しの下、メガピクセルの高解像度で100m先までの距離画像を得られる」(ブルックマンテクノロジ 取締役 会長で静岡大学 教授の川人祥二氏)。そんな革新的な測距技術を凸版印刷とCMOSイメージセンサーを手がける同社子会社のブルックマンテクノロジ注1)、静岡大学が開発し、米国ハワイで開催された国際半導体学会「2022 IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuits」(米国時間2022年6月12~17日。以下、VLSIシンポ2022)で発表した(図1)。

注1)ブルックマンテクノロジは、川人氏の研究成果を事業化するために2006年に設立された企業。凸版印刷が2021年に子会社化した。

図1 凸版印刷らが出展した「ハイブリッド駆動ToF方式(hToF)」の3次元距離画像センサー
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図1 凸版印刷らが出展した「ハイブリッド駆動ToF方式(hToF)」の3次元距離画像センサー
写真左の開発品が、ホノルルで開催された「2022 IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuits」に出展した実物。パソコンに映し出された距離画像は、近距離が赤色、遠距離が青色で表示されている。なお、会場は屋内だった(写真:日経クロステック)

 対象物との距離を測るToF(測距、Time of Flight)センサーは、産業用ロボットやドローン、スマートフォンなどに使われる。主な用途は周囲環境の認識や3D(3次元)モデルの生成、オートフォーカスといった機能である。基本的には照射した光が返ってくるまでの時間や位相差から距離を測る仕組みだ。

従来方式の“いいとこ取り”で課題解決へ

 これまでToFセンサーでは、解像度・距離・外光耐性注2)がそれぞれトレードオフの関係にあり、すべての性能を同時に向上させることは難しかった。解像度を例えばVGA(640×480)まで高めれば外光耐性が低くなり、屋外で駆動するドローンなどへの活用が難しくなる。外光耐性を高めれば解像度が低くなってしまう。さらに、長距離が得意な方式では解像度が低い傾向にあった。

注2)外光耐性とは、屋外など背景光(外光ノイズ)の多い環境下でも距離を高精度に測定するための耐性。外光耐性が十分に高ければ、照度の高い屋外でも測定可能になる。

 3者が開発した新方式のToFセンサーは、そんな関係を一変させるインパクトがある。これまでの「direct ToF(dToF)方式」と「indirect ToF(iToF)方式」という2つの方式を組み合わせることで、外光耐性や解像度を高めながら長距離測定を可能にしたからだ。屋外で活用するロボットやドローンなどへの活用が期待できる。

 2つの従来方式を組み合わせた「ハイブリッド駆動ToF方式(hToF)」は、川人氏が提唱する新技術だ。長距離測定に向くが解像度を高めにくいdToF方式と、解像度を高めやすいが距離が限られるiToF方式。それぞれの利点を“いいとこ取り”した(図2)。

図2 2つの従来方式を“いいとこ取り”
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図2 2つの従来方式を“いいとこ取り”
これまで解像度(Image Resolution)を高めると外光耐性が低く(low ambient)、外光耐性を高めると解像度が低くなるという課題があった。凸版印刷らはこれらの中間を狙うことで、ドローンやAGV(自動搬送車)でも使いやすくする(出所:凸版印刷)