2年前にリリースされたUbuntu 20.04 LTSと比較すると、Ubuntu 22.04 LTSには、利用上大きな影響を与える変更点がいくつか存在します。本パートでは、特にUbuntu 20.04 LTSからアップグレードするユーザーにとって影響範囲が大きな変更点について、その内容と対処方法を詳しく解説します。
FirefoxがSnapパッケージに
Ubuntu 22.04 LTSの大きな変更点の一つは、標準Webブラウザーの「Mozilla Firefox」(以下、Firefox)が、従来のDebianパッケージ(debパッケージ)ではなく、Snapパッケージで提供されるようになったことです。Debianパッケージは存在しますが、内容はSnap版への移行スクリプトになっています。
FirefoxのSnapパッケージは、開発元であるMozilla財団が直接作成して提供します。そのため、Firefoxの最新版が提供されるのとほぼ同時に、最新版のSnapパッケージもリリースされます。迅速なセキュリティアップデートが重要なFirefoxのようなソフトウエアにおいて、これは大きな利点です。
またSnapパッケージは、システムから隔離された環境で動作します。そのため、未知の脆弱性などによってFirefoxに問題が生じても、システムのほかのデータには影響を及ぼしません。
Snap化による三つの問題
ただし、残念ながら問題もあります。主な問題は「起動時間が遅い」「いくつかの機能が使えない」「安定性に難がある」の三つです。
このうち、使い勝手に大きく影響するのは起動時間の遅さです。従来比で数倍以上かかります。
これは、Snapパッケージの仕組みそのものに由来する問題で、回避策は基本的に存在しません。起動後は、なるべくそのまま使い続けるという対処しかないでしょう。
使えない機能には、「KeePassX」(https://www.keepassx.org/)などのパスワードマネジャーとの連携機能や、GNOME Shellの拡張機能をWebブラウザーからインストールする機能などがあります*2。これらは「Native Messaging」というプロトコルを利用しますが、このプロトコルのサポートがUbuntu 22.04 LTSのリリースに間に合いませんでした。こうした機能を使っている場合には、Ubuntu 22.04 LTSへのアップグレードは、しばらく待った方がよいでしょう*3。
また、「/tmp」のようなホームフォルダー外のフォルダーに、Firefoxから原則的にアクセスできなくなりました。HTMLファイルなどを開く場合は、ファイルをホームフォルダー以下にコピーします。
「名前を付けてページを保存」での保存場所にも注意が必要です。「~/ダウンロード」「~/ドキュメント」フォルダーは問題ありませんが、「~/デスクトップ」フォルダーにはファイルをうまく保存できません。
安定性の問題については、Ubuntu 22.04 LTSのリリースまでにおおむね解消しました。ただし、リリース後に新たな問題が見つかる恐れもあります。安定性重視のユーザーは、テスト環境を用意して1週間ほど試用しましょう。