仕事や学業で人工知能(AI)の知識が必要なことが増えてきた。AIを支える中心的な技術が機械学習だ。本特集では、AIの歴史と全体像から基本的な機械学習アルゴリズムのPython実装までを幅広く解説する。
現在、AI(Artificial Intelligence、人工知能)の“主流”と言える方式は「機械学習」と、機械学習の発展形である「深層学習」(ディープラーニング)です。これらは今やあらゆる分野で利用されています。まずは、AIの歴史を簡単にひもときながら、機械学習と深層学習が、どのように出現し、AIの主流になっていったのかを見ていきましょう(図1)。
AI小史:現在は第3次AIブーム
AIという言葉は、1956年頃に米国の計算機科学者であるジョン・マッカーシー氏が生み出したと言われています。この頃、最初のAIブーム(第1次AIブーム)が起こり、AIは社会のいろいろな問題を解決できる夢の技術として期待されました。
第1次AIブームの特徴は、ドラえもんのような「汎用型AI」を目指したことです。しかし、実際にはチェスのようなルールがはっきりした問題には対応できても、現実世界に存在する複雑な問題には対応できなかったため、ブームは下火になっていきました。
1980年代に入ると、人間がデータ分析を行うデータマイニングの技術が登場します。これに伴い、AIの中でも、「人の代わりに機械がデータを学習して、自動的に予測や分類を行う」=機械学習が注目されるようになりました。この機械学習の登場によって、第2次AIブームが起こります。以降、機械学習はAIの代名詞のようになり、機械学習のことをAIと呼ぶことが多くなりました。
また、第2次AIブームの頃のAIは、第1次AIブームで志向されたような汎用型AIではなく、画像認識や音声認識といった特定の用途に対応するための「特化型AI」を目指しました。この流れは現在も続いています。
第2次AIブームの頃に、現在につながる様々な機械学習の技術が開発されましたが、大きな課題も残していました。具体的には次のようなものです。
これらの課題の解決には、インターネットと高性能なコンピュータの出現を待たなければなりませんでした。
2010年代に入ると、インターネットとスマートフォンやソーシャルメディアの普及も相まって、比較的容易に収集できる大量のデータが日々生み出されるようになりました。また、比較的安価な割には高性能なGPU(Graphics Processing Unit)を機械学習の演算に使うことで、データの学習に必要な時間を大幅に短縮できるようになりました。第2次AIブームの頃の課題が解決されたわけです。
このような背景のもと、機械学習の世界に大きな技術革新が起こります。機械学習のアルゴリズムのひとつであるニューラルネットワークを発展させた深層学習の登場です。深層学習によって、従来の機械学習よりもはるかに高精度な予測や分類が可能になりました。深層学習は第3次AIブームを起こし、現在もそのブームが続いていると言えます。