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 住友化学は、窒化ガリウム(GaN)基板を手掛ける完全子会社サイオクスを2022年10月1日付けで吸収合併した。住友化学の情報電子化学部門に組み込むことで、研究開発のスピードアップを図る。同社は半導体レーザー(LD)用GaN基板でトップシェアを持つが、今後は縦型GaNパワー半導体に用途を広げていく。

 目下の目標は、2024年度の4インチ基板の本格量産だ。データセンター用サーバー電源、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)などをターゲット市場にみる。2026年ごろに6インチ基板も実用化し、2032年までに関連事業(元々サイオクスが開発していたGaN以外の事業)と合わせて300億円の売上規模を目指す。

GaNはSiCより高耐圧・高周波

 縦型GaNパワー半導体は、現在実用化されているGaN製品と異なる次世代パワーデバイスである。現在の「横型(GaN on Si)」は、シリコン(Si)基板上にGaNデバイスを構築する。このタイプは素子表面のみに電流が流れるため、電流の通り道が狭く、基本的に大きな電力を扱えない。一方で縦型(GaN on GaN)、すなわちGaN基板上にGaNデバイスを構築する今回のタイプは、素子全体に電流を流せる(図1)。

図1 縦型GaNは既存パワー半導体の性能を凌駕(りょうが)
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図1 縦型GaNは既存パワー半導体の性能を凌駕(りょうが)
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図1 縦型GaNは既存パワー半導体の性能を凌駕(りょうが)
材料ごとのパワー半導体の大まかな性能分布。住友化学が想定しているGaN基板上にGaNデバイスをつくる縦型(GaN on GaN)は、大電力を扱いながら、高周波駆動が可能なため、大電力かつ小型のインバーターを実現できる。現在実用化されているGaNデバイスは、主にSi基板上にGaNデバイスをつくる横型(GaN on Si)であるため、流せる電流や耐えられる電圧に限界がある(画像:縦型GaN MOSFETは豊田合成の開発例、その他は日経クロステック)

 したがって、縦型は大電力を扱うことができ、幅広い機器に汎用的に用いることができる。大電流を必要としないLDでは、縦型GaNが製品化されてきたが、大電流を流すパワー半導体は主に後述する結晶欠陥の問題から製品化が遅れていた。

 縦型GaNは、次世代パワー半導体筆頭の炭化ケイ素(SiC)を上回るポテンシャルがある。「耐圧(絶縁破壊電圧)」と「周波数(飽和電子速度)」がたけており、デバイスの電力損失を低減できるためだ。加えて、素子の省面積化にもつながる。例えば縦型GaNパワーデバイスを開発中の米NexGen Power Systemsは、SiCデバイスと比べてダイサイズが約1/4.5になると公表している(図2)。

図2 縦型GaNはデバイス自体が小型化
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図2 縦型GaNはデバイス自体が小型化
(画像:NexGen Power Systems)

 ただし、実用化や研究開発の面でGaNはSiCに後れをとっている。高品質なGaN単結晶をつくるのが難しいためだ。現状、「転位」と呼ばれる結晶内の欠陥の密度は、一般に103~107/cm2と、SiやSiCよりも高い。転位があると、そこから電流が漏れ出してデバイス特性を悪化させてしまう。そのため、Si基板を使う横型の方が先行している。ただ今後はパワー半導体用途の需要が見込まれるため、各社は基板の高品質化を急いでいる。